HANDs!プロジェクトって?
HANDs!のプロジェクトとは、hope and dreamの頭文字をとったものである。アジア9ヵ国(フィリピン・インドネシア・タイ・インド・マレーシア・ミャンマー・ネパール・カンボジア・日本)から防災や環境に関して普段から取り組んでいる21~33歳までの合計26人(以下、フェロー)が、防災教育・環境問題・復興問題について考え、次の時代の"防災"を背負って立つ人を育成するプロジェクトである。
今回は、第1期としてフィリピン(5日間)と日本(5日間)を訪れ、フィリピン研修ではデザイン思考・システム思考などプロジェクトの立ち上げ方やプロトタイプの作成、日本研修では東日本大震災の被災地を訪れ、学校現場での防災教育のあり方や地域コミュニティの作り方などを学ぶ研修であった。第2期は、来年2月に行われるインドネシア研修(1週間)が行われる。参加するフェローたちは、この2回の研修を経て、アクションプランを作成し、来年1年間かけてアクションプランを実行するものとなっている。
中学生たちと共に学んでいったフィリピン研修
フィリピンの首都マニアから1時間以上車を走らせてついた先が、今回の研修地マキリン山。フィリピンは熱帯地域であり、降り立った時から、日本でいう6月の梅雨以上の湿気がありジメッとしたところで、1日に1回スコールといった短時間の激しい雨が降る。フィリピンは排水処理が整備されておらず、この雨によって浸水したり山の方では、土砂崩れが発生するなど災害の被害も多い地域である。
フィリピン研修では、主に「デザイン思考」「システム思考」「風・土・水の人」の作り方を学習し、フェローたちだけでなく、PHSA(フィリピン芸術学校)というデザイン・ダンス・文学などを専門に学ぶ中学2年生たちも一緒に参加し学んでいった。
それぞれの関係者を巻き込んでいく「風・土・水」の理論
風の人:新たなアイデアやイベントを運んでくる「種」を生むNPOなど
水の人:風が運んできた「種」を地域に根付かせる学校の先生など
土の人:その種を大きくするために必要な地域住民の人たち
世界や社会など全体を俯瞰していきながら課題解決する「システム思考」
個を中心に考えていき課題解決する「デザイン思考」
それぞれのアドバイザーからのレクチャーを受けながら、フェローたちと生徒たちをミックスさせたグループを作り、「防災教育・環境問題・食の問題」の3つの中から自分たちで課題を選択し、プロトタイプを作っていく。プロトタイプ作成にあたり、地域の現状や課題を出していく「ブレインストーミング」、「フィールドワーク」を行うなど1つずつステップを踏んで行っていった。
私の班は、防災教育で生徒たちがより楽しく、そして記憶に残るような防災教育プログラムをゲーム要素を取り入れて作成した。
「みんな、防災には興味は持っているけど、いつも同じことばかりやっていて、つまらなくて記憶に残ってないとおもう」(一緒なグループにいた生徒の声)
この発言は印象的だった。日本の学校現場でも、地震や火災に揃えて避難訓練が行われているが、毎回同じ内容の繰り返しでリアリティもない。日本では、災害が多く発生しているなかで生徒たちが避難訓練のなかで何か得ることがないと意味がないとおもう。そのなかで、防災の知識を学びながら、質問に答えてポイントを貯めていくといったゲーム要素を取り入れたプロトタイプを作成した。実際、成果発表会が行われたが、この作品に対するアドバイスや効果・検証のところまで本研修で実現できなかったことは非常に残念であった。この作品を使って、生徒たちがどのように感じるのか聞きたかったところである。
フィリピン研修は朝から夜まで、レクチャーを聞きながら活動を行ってきた。全て英語でのレクチャーは内容を理解することに苦しんだが、フェローのサポートもあり内容を理解しながら進めることができた。また、フェローたちだけでなく生徒たちの意見も驚かさせるものもあったり、進んでプロトタイプ制作に励んでくれるなど様々な面で刺激を受けた研修であった。
子供向け防災教育プログラム「いざ!カエルキャラバン!」
フィリピン研修が終わり、次は日本研修へ!
日本研修は、東京では子供向け防災教育プログラム「いざ、カエルキャラバン!」の視察を経て、東日本大震災で大きな被害をもたらした仙台・石巻の被災地を訪問し、津波の被害に遭ったなかで、生徒たちが学校の屋上に避難した仙台市立荒浜小学校を見学するなど地域の人々のコミュニティに視点をあてた研修であった。
「いざカエルキャラバン」は主に神戸で活動されているNPO法人プラスアーツの子どもを対象にした防災教育プログラムである。今回、代表の永田さんから設立経緯やどのようなプログラムを行っているのか講義を受け、実際に豊洲で行われているイベントの視察を行った。視察を行い感じたことは、NPOのスタッフ運営を行うのではなく、事前に地域の方はじめレクチャーを行い、地域の方が運営を行っていることである。スタッフが事前に丁寧にレクチャーを行うことで、どこの地域でも実施できるような仕組みとなっている。プログラムは、AEDの講習や瓦礫に挟まった人を救出する方法など、子どもたちでも取り組めるような内容となっている。また、様々なプログラムを体験することでシールをもらい集めたシールをおもちゃと交換でき最後にオークションに参加できるなど、子どもたちにも楽しんでもらいながら、防災を学べる仕組み作りとなっている。外国のフェローたちも子どもたちにまじり、一緒にプログラムに参加していた。普段から知っていることではあるが、言葉だけで教えられるのではなく、体を使って体験させることでより理解も深まるのではないかと感じた。この「いざカエルキャラバン」は日本だけでなく、カンボジアやインドネシアなど海外も実践されており、それぞれの国でカエルキャラバンを活用した防災教育が行われている。
津波の被害を今も残している仙台市立荒浜小学校
仙台へ移動し、東日本大震災で津波によって家が流された地区を訪れ、そのなかで生徒や避難した地域の人たちが、校長先生の指示で全員学校の屋上に避難したことで助かった仙台市立荒浜小学校を訪問した。震災から6年がたった今でも、この学校は行政によって当時の状況を残したままになっている。この学校は、海から700mのところにあり、地震発生から1時間後に津波がやってきたのではと推測されている。学校は、4階建てであり津波は2階の天井付近まできたといわれている。1階は、津波によって車や瓦礫などが流されてきた写真が掲示され、教室もそのままの形となっている。4階には、校長先生や地域住民の方の当時の証言や津波様子などを映像を見ることができる。外国のフェローたちの中には、映像を見て涙を流す様子も見られた。この学校では、地域住民の方の強い願いもありこの学校を残そうという動きが見られました。多くの方に見てもらえるよう、当時の震災の記録も残しつつデザインされた施設である。
「震災で被害にあった建物を壊すのではなく、被害の記録を残していくことで後世に繋げていくことも防災なのではないか」(外国のフェローより)
被害にあった建物は壊されることも多いが、荒浜小学校のように地域住民の方の願いによって残されている建物など、このような建物は非常に大切なものであり、これからを生きていく私たちに語り継いでいかなければいけないと感じたところであった。
被災地の現状
自分にとって、初めての被災地訪問は想像を超えるものであった。石巻市では、津波によって多くの建物が流された。今回、訪問した石巻市の漁港付近を地元の方に案内していただいたが、漁港の付近は震災前は住宅や病院があったそうだ。しかし、津波によって流されこの地区は震災慰霊公園が作られるところや今後も土地活用が決まってなかったりといった問題も起きている。この地域は6mの津波がきたこともあり、海岸付近には7mの防波堤が作られており、石巻の綺麗な海岸風景を市内からは遮ってしまっているなど、津波によって大きく町が変わってしまうことを感じた。写真にあるように、港から少し離れた高台にマンションが建てられ、屋上には津波避難ビルと同じように津波がきた時に避難する場所となっている。震災から6年が経つが、現在も復興は進んでいるが地域に応じて問題もあり、なかなか復興が進んでいない地域もあることを今回の訪問で知った。
世界観が変わった10日間
英語でのコミュニケーションは英語を理解することに必死で、議論に参加することも難しかった。これから日々勉強して、次回の研修の時には自分の意見も言えるよう頑張りたい。ただ、自分の思ってた以上に人に思いが伝わることもあり嬉しいこともあったが、改めて自分の英語能力を痛感させられた。そんななか、フェローたちは私に優しく教えてくれたりフレンドリーに接してくれた。本当に10日間通じて人気者であった。本当に感謝している、ありがとう!
また、フィリピンの生徒たちにも黄色い声援を5日間受けたことは、本当に誇りであり、自分がここまでモテたことは多分ないとおもう。研修は大変だったが、彼らがいてくれたことで毎日楽しい時間を過ごすことができた。別れるのが辛かったほどだ、このモテさが、日本に帰っていかせることができればいいのだが•••
何はともあれ、様々なことを学んだので、来年のインドネシア研修やアクションプランに向けて、また気持ちを切り替えてがんばるばかりです。