こんにちは。東京大学 大学院 学際情報学府 文化・人間情報学コースの大井将生です。
この投稿では、大分市で開催された「ジュニアガイド」ワークショップについて報告させていただきます。
大分市教育委員会文化財課と東京大学大学院情報学環の主催で行われたこのワークショップは、大分市のユニークな歴史実践の一つである「FUNAIジュニアガイド」の皆さんに、デジタルアーカイブやデジタルアースを媒介として、地域の歴史資料のフロー化(発信)の新しい手法を学び、考えてもらうことを目指して行われました。
小学生・中学生・高校生から構成される「FUNAIジュニアガイド」は、厳しい検定試験を突破した豊後府内の歴史のスペシャリストとして深い知識を有しているだけでなく、「自分達の地域の歴史・魅力を多くの人に伝えたい」という思いを持っています。そんな地域の未来を担う歴史家たちが、より楽しく、より輝くための一助となることを願い、ワークショップは以下のようにデザインされました。
・情報デザインの専門家である東京大学の渡邉英徳先生による、「ウクライナ衛星画像マップ」や「忘れない」などの過去ー現代ー未来を繋ぐ情報の可視化についてのレクチャー
・豊後の中世史の専門家である名古屋学院大学の鹿毛敏夫先生による、府内の人々の生活について物や人、そして町の構造という視座から考えるレクチャー
・筆者による、Re:earthを活用した「地域の魅力を可視化し、発信する、探究学習のアウトプット」のあり方についての問題提起とデモンストレーション
・横浜国際高校の徳原拓哉先生による、実際のアウトリーチ活動を想定した「伝える」ための考察を行う対話型アクティブラーニングと子どもたちによる発表活動
上記ワークショップは、中世の宗教史や対外関係史の専門家である東京大学の岡美穂子先生のマネジメントのもと、坪根伸也課長はじめ大分市文化財課の皆さんによる資料やデータの整理・提供・二次利用手続きや当日の運営という協力を得て行われました。
このように、地域の歴史資料を「どのように残し、繋ぎ、表現し、伝えるか」という視点で、歴史学・情報学・教育学の専門家と自治体の職員、そして小学生・中学生・高校生が一堂に会して議論することで、地域の資料に新たな意味が付与され、地域の内外や未来に継承されるというワークショップデザインは、他の自治体でも参考にしていただける「官学連携」のモデルケースになるのではないかと考えています。
さらに、ワークショップのために制作した教材は、学校教育の目線に基づいたキーワードや学習指導要領コードなどの「教育メタデータ」を付与し、相互運用性・機械可読性の高いIIIF(International Image Interoperability Framework)を用いて「多様な資料を活用した教材アーカイブ」にて公開することで二次利用可能なオープンデータとして提供しています(図)。
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図. 教育メタデータを付与し、IIIFビューアで閲覧・ダウンロード可能にしたW.S.教材
今後も、各地域の魅力溢れる歴史資料を、多様な属性の専門家の連携・協働によって全国の地域学習・生涯教育の現場や小学校・中学校・高等学校にフロー化できるよう、研究と修養に努めたいと考えております。