こんにちは〜渡邉研博士前期課程 曹好(ソウ コウ)です。
このたび、2023年度グッドデザイン・ニューホープ賞に入選した、次世代向けの平和教育ツール「平和のかけら: Pieces of Peace」の作品を紹介いたします。
作品の制作背景
80年ほど前の世界中の子供たちは、第二次世界大戦による苦しみを経験しました。今のウクライナの子供たちも戦争による迫害を受け、平和を待ち望んでいます。
戦争とは、平和な時代・環境で育った子供たちにとって、自分が生きる日常と時間的・空間的にかけ離れたものかもしれません。そのため、悲しい戦争体験を持つ子供たちの生活と今の日常生活を結びつけて平和について考えることが現時点の課題といえます。
デザインプロセス
①課題の抽出
まず、小学校の担当教員にインタビューを行い、課題を抽出しました。学校現場での課題を解決するため、教育学とデザイン学の知見から制作を展開しました。
②デザインコンセプト
担当教員とのインタビューの中で明らかになった、今の小学生たちが「戦争が自分と無関係なこと」と感じているという課題を解決するため、戦闘機や爆弾ではなく子供や建物が写っている写真を選定し、その写真を構成するピースを子供たち自身が自由に再構築することができる様にデザインしました。
平和のかけら
③ブラッシュアップ
プロトタイプデザインの後も担当教員と打ち合わせを重ね、写真の選定やピースを抽出する対象について改善を重ねました。その結果、多様な国(立場)や多様な時代の戦争場面を扱うことで戦争や平和の多面性への気づきを支援するデザインにしました。
④実践
2023年2月に、月島第二小学校6年生約60名を対象として、デザインしたツールを用いて平和学習を実践しました。また、2023年8月に広島テレビ本社で開催した「ミライの平和活動」展にも出展しました。
東京都月島第二小学校での実践
広島「ミライの平和活動」の展示の中ワークショップ
⑤アーカイブ化と展示
平和活動は、持続可能なかたちにすることが必要です。学校内で閉じられた単発の平和学習ではなく、Webで多くの方が活用可能な形にするとともに子供たちの創造した作品を未来に継承可能な「アーカイブ」として構築することを目指しました。この情報デザインによって、子どもたちの作品は、時間や空間を超えて人々に平和を伝えていきます。
「平和のかけら」作品アーカイブ(一部)
将来の展望
「平和のかけら」の制作には、渡邉英徳先生をはじめ、実践校の関係者、研究室関係者の皆さまほか、多くの方々からのご支援とご協力をいただきました。グッドデザイン・ニューホープ賞の入選に際しては、以下のコメントを頂戴しました。本当にありがとうございます。
戦争という出来事が教科書やメディアから情報として発信されていても、それを子供たちが自分ごととして捉えるのはなかなか難しい。本作品は、戦争を受動的に学ぶのではなく、写真を用いて過去を想像し、写真のパーツを使って平和な未来を創造するという、自分ごととして学習できるツールとして上手にデザインされている。提案に留まらず、既に小学校での平和学習のワークショップを実践している点や、より多くの人が活用できるようにテンプレートやアーカイブが用意されている点も評価したい。
本作品は、11月16日〜20日の会期で開催される「東京大学制作展」にて、展示発表されます。会期中18日、19日11時〜17時「平和のかけら」ワークショップも体験できますので、ぜひご来場ください!
さらに、渡邉研究室と共同研究を行なっている日本生協連、長野県の小学校などと連携しながら、各地で実践のワークショップを開催していきます。
私はデザイナー・研究者として、社会課題とデザインを結びつける実践と研究を頑張ります。
作品の公式サイト:https://piecesofpeace.studio.site/