渡邉英徳研究室では,東日本大震災から15年を迎えるにあたり,震災に関連するデジタルアーカイブ群の大規模なアップデートを実施しました。 本アップデートは,記憶の記録を単なるデータとして「ストック(蓄積)」するにとどめず,人々の日常空間に「フロー(流れ)」として展開させることを目的としています。
また,今回の一連の開発においてはOpenAIの「Codex」を活用しました。AIと人間の協働によるコーディング手法を導入することで,実装の高速化とシステムの最適化を実現しています。
各コンテンツの主なアップデート内容は以下の通りです。
「東日本大震災ツイートAR」の公開
「東日本大震災ツイートAR」を東京大学・本郷キャンパスで起動してみました。発災直後の工学部2号館でのつぶやきなどがみられます。AR機能を使って,周辺にある直近100件のツイート(ポスト)が閲覧可能です。 pic.twitter.com/hQSKca6pz7
— 渡邉英徳 wtnv (@hwtnv) February 16, 2026
2011年3月11日の震災発生から24時間以内の位置情報付きツイートを可視化する「東日本大震災ツイートマッピング」に,新たにAR(拡張現実)機能を実装しました。2月にNHKの取材を受け,3月の震災関連特集のニュースで放送予定です。
スマートフォン等の端末をかざすと,現在地の周辺で当時発信された直近100件のツイートが実際の風景に重ねて表示されます。専用アプリのインストールは不要で,Webブラウザから即座に体験可能です。
本コンテンツのソースコードはGitHubにて公開しています。
「忘れない 震災犠牲者の行動記録」の全面刷新
2016年に岩手日報社と共同制作したデジタルアーカイブ「忘れない 震災犠牲者の行動記録」のシステムおよびUIデザインを全面的に刷新しました。告知したXポストには大きな反響があり,これまでの閲覧数は4400万インプレッションを超えています。
東日本大震災から15年の今年,「忘れない 震災犠牲者の行動記録」のアイコンデザインを改修しました。
— 渡邉英徳 wtnv (@hwtnv) February 13, 2026
亡くなった人々の「最後の行動」がアニメーションで再現されます。 pic.twitter.com/Y63lzoR29L
震災で犠牲となった方々の最後の行動を,デジタル地球儀上でアニメーションとして再現します。Webブラウザやデバイスの環境変化に対応し,より操作性を高めるとともに,持続可能なコンテンツとして機能させるためのアップデートを施しました。
現在,「東日本大震災ツイートAR」と同じように機能するARアプリも岩手日報・学生チームと開発中です。近日中に公開予定です。
「東日本大震災アーカイブ」の更新
2011年に公開した「東日本大震災アーカイブ」を10年ぶりに更新しました。3D描画のアルゴリズムを刷新し,動作がさらに軽快になりました。
被災者のみなさまの証言,写真・映像資料を3D空間上で閲覧可能です。また,証言・写真のキャプションを日英翻訳し,言語を切り替えて閲覧できるようになりました。
東日本大震災「減災リポート」アーカイブ更新+AI要約機能のテスト実装
天気情報サイト「ウェザーニュース」の会員が,東日本大震災の発災から翌々日の午前0時までに投稿した「減災リポート」を可視化するコンテンツ,東日本大震災「減災リポート」アーカイブを全面的に更新しました。
大量のマーカを処理するために,基盤の地図ソフトをMapBoxに変更。また,マップ上に表示される各地の「減災リポート」群を,AIを用いて自動要約する機能もテスト中です。
画面内の被害状況を伝える膨大なレポート群から,「全体傾向」や「主な話題」などの概要を瞬時に抽出・提示します。ただしAIの運用コストが相応にかかるため,今後は展示会等で体験できるよう準備を進める予定です。
開発プロセスにおけるAI技術の導入
AI(Codex)のコード生成を活かして,AR機能の実装を半日程度で完了させるなど,開発期間を劇的に短縮することができました。 技術的ハードルが低下したことで,私たち制作者は「どのように記憶を伝えるか」という本質的なデザインやストーリーテリングの構築に注力することが可能です。開発期間の短縮により,私たちが提唱する「リアルタイム・デジタルアーカイブ」のコンセプトも,より現実味を帯びたものとなってきています。
関連イベントの開催
3月12日に,東京大学にて「災害デジタルアーカイブの最前線 2026」を開催します。「ロングタイムとリアルタイム」「コミュニケーションとコンバージェンス」の視点から,デジタルアーカイブの未来を展望します。ぜひご参加ください。

