「柏飛行場と秋水 - 柏の葉 1945-2020」出展

 


八谷和彦さんのお誘いを受け,『柏飛行場と秋水 - 柏の葉 1945-2020』展に参加します。このモノクロ写真・カラー化写真は,1945年初夏に柏飛行場で撮影された,練習機「秋草」とパイロットです。カラー化に際しては,片渕須直監督の丁寧かつ詳細なご監修をいただきました。本当にありがとうございます。


展覧会の詳細についてはウェブサイトをご覧ください。

  • 会期 2020年12月7日(月)- 20日(日) ※会期中無休
  • 開館時間 9:00-21:00 ※最終日20日のみ17:00まで
  • 会場 柏の葉T-SITE 1F
  • 観覧料 無料
  • 主催 東京藝術大学、三井不動産株式会社 企画 八谷和彦(東京藝術大学 先端芸術表現科 准教授) 
  • 出展者 八谷和彦,柏歴史クラブ,渡邉英徳(「記憶の解凍」プロジェクト),柴田一哉(秋水研究家),梅原徹,鈴木みそ,小林エリカ,市川義夫(秋水史料研)
  • 撮影・編集 髙橋生也
  • 協力 柏市,柏市教育委員会,片渕須直,稲川貴大(インターステラテクノロジズ),佐久間則夫(秋水史料研),浦久淳子(柏歴史クラブ),東京藝術大学 先端芸術表現科,NPO法人こんぶくろ池自然の森
  • 問い合わせ先 柏飛行場と秋水展実行委員会(info.kashiwanoha.af at gmail.com)




「AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争」 出版のお知らせ

『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』※デザインは仮のものです

国立大学法人東京大学(総長:五神 真)学生の庭田杏珠さんと,大学院情報学環の渡邉英徳教授は,AI技術と資料・対話をもとにカラー化した戦前〜戦後の貴重な写真を網羅したAIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争を7月16日(木)に出版いたします。この出版は,株式会社光文社(代表取締役社長:武田真士男)との共同企画によるものです。

広島出身の庭田さんと渡邉教授は,AI(人工知能)技術で自動カラー化した写真をもとに,対話の場を生み出す『記憶の解凍』プロジェクト に取り組んでいます。このプロジェクトは,庭田さんが高校在学中の2017年にスタートし,発展しながら続けられてきました。

『記憶の解凍』においては,AI技術でモノクロ写真を自動カラー化したのち,戦争体験者との直接の対話,SNSで寄せられたコメント,当時の資料などをもとに,手作業で色彩を補正していきます。この過程において,モノクロ写真の印象が大きく変化し,遠い昔の戦争が現在の日常と地続きになり,写し込まれたできごとにまつわる対話が創発します。このことにより,貴重な資料とできごとの記憶を未来に継承する一助となることを企図しています。

本書は,これまでの研究成果をまとめたものです。戦前の広島・沖縄・国内のようす,開戦から太平洋戦線,沖縄戦・空襲・原爆投下,そして戦後の復興。個人提供による貴重な写真,朝日新聞社・共同通信社提供の写真,アメリカ軍が撮影した戦場写真など約350枚をカラー化し,収録しています。

つきましては,本件について記事掲載および取材等をお願いいたしたく,ご案内申し上げます。

【書籍名称】

 「AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争」

【書誌情報】
  • 発売日:2020年7月16日(木)(電子書籍は約1週間後の発売)
  • 価格:本体1,800円+税(予定価格)
  • 判型:新書判
  • ページ数:472ページ(予定)
  • ISBN:978-4-334-04481-7
  • 予約販売ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/4334044816
【著者紹介】

「記憶の解凍」プロジェクト
  • 庭田杏珠 2001年,広島県生まれ。東京大学に在学し「平和教育の教育空間」について,実践と研究を進める。2017年, 中島地区(現在の広島平和記念公園)に生家のあった濵井德三氏と出会い「記憶の解凍」の活動を開始。これまでに展覧会,映像制作,アプリ開発など,アートやテクノロジーを活かした「戦争体験者の想い・記憶の継承」に取り組む。国際平和映像祭(UFPFF)学生部門賞(2018年),「国際理解・国際協力のための高校生の主張コンクール」外務大臣賞(2019年)などを受賞。
  • 渡邉英徳 1974年,大分県生まれ。東京大学大学院情報学環教授。情報デザインとデジタルアーカイブによる記憶の継承のあり方について研究を進める。これまでに「ヒロシマ・アーカイブ」「ナガサキ・アーカイブ」などを制作。2016年より白黒写真のカラー化を始め,2017年より庭田と共同で「記憶の解凍」に取り組む。岩手日報社との共同研究成果「忘れない:震災犠牲者の行動記録」は日本新聞協会賞(2016年)を受賞。その他,文化庁メディア芸術祭,アルスエレクトロニカなどで受賞・入選。

「COVID-19に関するアーカイブ活動の呼びかけ」新型コロナウイルス感染症に関するデジタルアーカイブ研究会

「COVID-19に関するアーカイブ活動の呼びかけ」


現在、新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の感染拡大を受けて、社会の各層でさまざまな取り組みが行われています。

あらゆる点において、最も尊重されるのは人命であり、人命を守る医療の維持であることは言うまでもありません。

しかし、COVID-19に向き合うためには、感染症の実相や社会のありさまを正確に記録することも欠かせません。事実、今回のCOVID-19禍において、私たちはこれまでの疫病の歴史、たとえば約100年前のパンデミック「スペインかぜ」の記録などからまなべる点は多々あるはずです。
しかし今回、過去の疫病の教訓が十分に生かされているとは言えません。今後の社会においてCOVID-19と相対していくためには、歴史に残るであろう現在の社会の状況を、仔細に記録していくことが肝要です。

そこで私たちは、図書館・博物館・自治体・大学・産業など、社会状況の記録に関心を持つみなさんに向けて、いま社会が直面しているCOVID-19に関する「アーカイブ活動の推進」を提案します。たとえば、次のような取り組みが考えられるでしょう。
  • 市民による情報の収集活動を、十分に安全を確保することに留意したうえで、可能な範囲で支援すること
  • メディア報道や各種情報発信の内容をアーカイブすること
  • 自らの組織(たとえば自治体であれば対策本部等)や地域の記録をアーカイブすること
※アーカイブの手段については、デジタル・アナログを問いません

以上はあくまで例に過ぎません。私たちは、COVID-19に関するアーカイブ活動が本来地域の情報集積のハブである図書館・博物館等を中心として実施されることを切望しています。また、本研究会としても活動への協力を惜しみません。アーカイブ活動に関するご相談をお気軽にお寄せください。

なお本研究会は、デジタルアーカイブ学会の一研究会としてスタートします。今後、COVID-19に関するアーカイブ活動に資する様々な情報交換・共有を、国内外の関係者と幅広く進めていきます。

主査・渡邉英徳(東京大学 大学院情報学環)
sig-covid19@googlegroups.com

ふるさと納税制度を用いた着地型観光のモデルの研究-東京都大島町におけるケーススタディ-

こんにちは。
首都大学東京大学院修士2年の福山です。
今回の投稿では私の修士研究について紹介させていただきます。


私は,「地域の人との交流を産む観光モデルについて検討する」ということを目的とし,修士研究を行ないました。


近年,観光者が行なう観光形態は,自分の趣味嗜好を重視できる”着地型”の観光に変わって来ています。
その中で観光を通したまちづくりなどの側面を持っている「着地型観光」について着目しました。

着地型観光とは,「地域住民が主体となって観光資源を発掘,プログラム化し,旅行商品としてマーケットへ発信・集客をおこなう観光事業への一連の取り組み」として定義されています。これは観光を開発する主体が企業から地域へと変わってきたことを指しています。
しかしこれには,”発地型”の観光では,売り手・買い手として捉えられていたものが,”着地型”の観光としては,ホスト・ゲストへと取引の主体が変わっただけであるとの指摘があります。






また,山村は次世代ツーリズムが向かう行く先として「新たな文化創造につながる感性的ネットワーク(架け橋)構築の一形態としての観光」を目指すべきだと示しています。
「コト」を消費することを共有することにより,「観光」を通して,単なるホスト・ゲストの枠組みを超える,観光者と受け入れ側の多様な関係が求められていると考えました。


本研究では観光を,共有すべき価値を見出すための「観光」と位置付けました。
共有すべき価値として,本研究では観光を通して地域の受け入れ側と観光者の対等なコミュニティを築き上げることを目指し、そのためには,観光を通した「交流」が必要であると考えました。


このことから,前述した「地域の人との交流を産む観光モデルについて検討する」という目的を設定いたしました。

またそのためには,「文献調査と現地調査の結果を元に,ふるさと納税制度を用いた着地型観光のモデルを提案する」ことと設定しました。

ふるさと納税制度には,返礼品を巡る課題があり今回の研究において着地型観光ととても親和性が高いと考え,このように設定しました。



その後に本研究の対象を,ふるさと納税制度に関心が高い主婦層が含まれている核家族と設定しました。また,モデルの要件として以下の受け入れ側のガイドラインを定めることにしました。

  1. 地域資源を生かした観光資源の抽出
  2. 対象家族に対して事前ヒアリングの実施
  3. 2)をもとに複数個のフレキシブルな観光プランの作成
  4. 交流を志向しつつ,観光者と同行しながら観光案内
  5. リアルタイムの要望に可能な限り応え,旅程を変えつつ実施

これを踏まえ実践のモデルツアーとして,東京都大島町を対象地域として観光プランを企画しました。12月に研究室所属の大井さん一家協力の元,一泊二日の観光プランとして行なうことができました。






当日は,現地のガイドとして同行し交流をしながら観光案内をしました。家族の方々にはとても伊豆大島を楽しんでいらっしゃる様子が見え,また,ガイドとの関係が構築しつつある様子が見られました。

また実践後のヒアリングにより,「ガイドとの交流も楽しむことができ良い思い出になった」など,想定よりも高い評価を得ることができたと考えました。これは,ガイドがいることによるメリットが働いたことや,親と子の両方の立場から満足できたこと,ストレス無く観光できたことが考えられます。



今回の研究では,提案する交流志向の観光モデルによって,地域とのコミュニケーションの促進や地縁を超えたネットワークを形成し得たことであると考えます。このことにより,提案するモデルは,観光者により良い観光体験を提供しながら,地元主体の観光モデルを確立するための一助となりえるものだと考えています。



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自分は,渡邉先生が首都大にいる時から3年間渡邉研に在籍させていただきました。
東大に研究室を移しても,変わらずゼミにて研究を進めることができ,最後の首都大生として修士研究を終えることができたのは,渡邉先生のお陰であると感じています。
本当にお世話になりました,そしてありがとうございました!!!

また,日頃から議論ができ,未熟な私に良きアドバイスをいただいた渡邉研の先輩のみなさまには感謝しきれません。本当にありがとうございました!



これから社会人になりますが,今までの経験を生かして様々なことにチャレンジしていきたいと思います。
3年間お世話になりました!


擬態するポートレート -肖像写真と風景写真の可逆変換体験によるプライバシー観の変化の表現-


こんにちは.
東京大学大学院 学際情報学府 文化・人間情報学コース修士2年の中原貴文です。
この投稿では、自分の修士研究についてご報告します。

修士研究では,「顔」にまつわるプライバシー観のありようについて再考するきっかけを提供すること,を目的として取り組みました.
そのために,情報環境における「顔」の保護手段として「肖像写真を風景写真に擬態させる」体験を提供するメディアアート作品「擬態するポートレート」を制作しました.

作品を実現するために以下のシステムを開発しました.まず,色相・彩度・明度の平均と標準偏差を用いて,肖像(入力)画像と色彩が類似した風景画像をDBから検索し,目的画像とします.次に,ColorTransfer法により目的画像に色調を転写します.さらに全ての画素を輝度・色相でクラスタリングし,マッピングした結果に基づいて画素を並べ替え,目的画像を擬似的に再現します.




このシステムを用いて,肖像・風景写真の変換を体験する展示作品と,変換前後の写真を見比べるために,それぞれの写真をプリントアウトし比較できるポスターとアルバムを制作しました.この作品を通して,自分自身の情報をコンピュータシステムに委ねる危険性・プライバシーの主体的な管理の重要さを,人々に提示することを目指しました.加えて,学内・学外にてそれぞれ展示を行い,行動観察と体験者の「気付き」を確認するためのアンケートを実施しました.


(東京大学制作展Extra2019 展示)

(展示の様子)

行動観察の結果,両方の展示で,変換される過程を見て驚いたり,変換前後の写真を見比べるようすが観察され,多くの人に「顔」を取り巻く社会状況に抵抗するという概念を伝えることができ,そのことが肯定的に受け取られているようでした.また,学外の展示におけるアンケートでは,作品を通じて個人の肖像写真のやり取りについて明るい期待を抱いていること・プライバシーと付き合う姿勢に前向きな考えが生まれてることがわかりました.このことから,体験者の中で「顔」にまつわるプライバシーについての意識の変容が生まれていることが読み取れました.

これらのことから,制作したシステムを用いた作品の展示と肖像・風景写真の変換体験により,「顔」にまつわるプライバシーについて再考するきっかけを提供できたと考えます.

この研究では,情報社会における重要な要素である「顔」に関する情報の保護技術を開発したこと,さらに,その技術をメディアアートとして表現することにより,今後の肖像写真の取り扱いについて問題提起したことを達成できたと考えています.

自分は,この三月で卒業をし,就職しますが,今後も,活動を続けて作品をブラッシュアップしていけたらと思います.



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自分は,渡邊研で首都大学東京の学部生時代から含めて合計で4年間在籍しました.
はじめにゼミに参加した時,先輩方と渡邊先生の議論のレベルの高さに愕然としました.
スキルや研究の方法など,ダメダメだった自分は,なんとか食らいついていくことで精一杯だった四年間だったと思います.

いつの間にか,修士2年となり,卒業してしまいますが,この研究室で学んだことで,大きく成長させていただけたと思います.


自分は就職し,大学を離れてしまいますが,今後も同期をはじめ、先輩・後輩たちとも引き続き交流できたらと思っています.
4年間大変お世話になりました。ありがとうございました!









埋もれた「らしさ」の提示


こんにちは
首都大学東京大学院、修士2年の花岡です。

今回の投稿では、私が2年間かけて取り組んだ修士研究の紹介をしたいと思います。

私は『現代社会において埋没した「らしさ」を提示するメディアアート作品の制作』というテーマでこの2年間修士研究を行いました。

この研究では、個人の「らしさ」が顕著に表現されている「顔」を用いたメディアアート作品を制作し、鑑賞者(体験者)自らの「らしさ」がその場で他人の「らしさ」に飲み込まれ、埋もれてしまう様を表現することで、現代社会において個人の「らしさ」が埋没していることへの気づきを人々に与え、アイデンティティのありようについて再考する機会を提供することを目的としました。

この作品を制作するために、「顔」が主題となっている写真5000枚を利用して、作品の体験者のリアルタイム映像から動的なフォトモザイクを作成するシステムを開発しました。
さらに、作品体験者の「らしさ」が飲み込まれていく様を表現するために、作成したシステムに工夫を加え、メディアアート作品としました。

作成した作品は以下の動画でご覧いただけます。


その後、作品の評価を行いました。
作品の評価では、首都大学東京システムデザイン学部インダストリアルアートコースの学部3年生8名に対して約1時間の所要時間で作品体験ワークショップを開催しました。
ワークショップでは、まず初めにInstagramに関する、知見を体験者間で共有し、さらに主催者側から、数種類の情報を提供しました。あらかじめInstagramに関する知識を提供していたため、作品の意図が理解しやすい状況になりました。
実際に作品を体験している最中は、Webカメラより取得したリアルタイム映像から作成する動的なフォトモザイクへの面白さに注意がひかれ、「らしさ」関して考えるようには感じられませんでした。しかし、作品体験後の質問紙では大多数の参加者が「Instagramでは,個人のらしさが埋没していると思うか。」という設問に対して「はい」と回答しました。この結果より、体験者の中に潜在していた、Instagramにおける「らしさ」への考えが意識化されたと考えました。

以下にワークショップの様子を示します。


さらに、自らの過去の投稿に関して見つめ直すと、「自分らしさ」が投影されていないことに対する恥ずかしさを感じたり、投稿の意図を考えるきっかけとなりました。本研究で作成したメディアアート作品単体では、これほど大きな影響を与えられたとは考えにくいです。しかしながら、解説者を含め、ワークショップ形式で、事前の知識共有などを行うことで、作品に対してより肯定的な回答が得られたと考えられる。さらに、作品に対しての意見を求めたところ,Instagramのありようについて考えさせられるや、自分の存在が飲まれ、気持ち悪いなどの印象を与えたこともわかりました。


これらの研究結果より、私は、メディアアート作品を通して、体験者が「らしさ」に関して再考するきっかけを提供できたと考えられます。しかし、この提示方法では、より多くの人に「らしさ」に関して再考するきっかけを提供することはできません。
そのため、今後も、このような活動を続けていき、より上記で示したことを提供できるような作品を制作していきたいと考えています。


最後になりますが、個人的なメッセージを書かせていただきます。
4月より、就職のため、3年もの間お世話になったこの研究室を卒業していきます。

渡邉先生には、この3年間で様々な知見や考え方をご教授いただきました。
この場を借りて感謝の意を申し上げます。

さらに、渡邉研究室には、いつでも面白い仲間たちが存在していました。
皆、多種多様な研究テーマではありますが、どこか通じ合っている部分があり、毎日様々な刺激を受けていました。

大学3年生の時にこの研究室に所属する選択をしたことが、とても良い選択だったと思います。
3年間本当にお世話になりました。ありがとうございます。そして卒業こそしてしまいますが、来年度からもよろしくお願いします。

レビュー文書における特徴語と「いいね!」に基づく評価情報の抽出~戦争映画の日本語レビューを例として~

東京大学大学院 学際情報学府 文化・人間情報学コース修士2年の岑天霞(シン テンカ)です。
この投稿では、修士研究についてご報告します。私の修士論文のテーマは「レビュー文書における特徴語と「いいね!」に基づく評価情報の抽出~戦争映画の日本語レビューを例として~」です。

修士課程に入学する前、首都大の渡邉研で、日中戦争映画の情報をグーグルアース上でマッピングするデジタルアーカイブを作成し、それに基づいた比較分析を行いました。そこから、戦争映画を用いて日中間の意思疎通を深める可能性を感じました。


図1日中戦争映画デジタルアーカイブ

大学院に進学して、戦争映画を用いた日中交流に関する実践しながら、ネット上の映画レビューの分析手法の提案に取り組みました。

現在、誰も自由に映画レビューを映画情報ウェブサイトに投稿することができます。こうしたメディアにおいては,映画作品についての,大衆の一般的な意見が顕在化しています。しかし、レビューの意見がバラバラであり、データの量が多いため、目視・手動で分析することは困難です。
自然言語処理によってレビューの評価情報を抽出するための既存の手法は「評価情報の抽出・要約」と「感情分析・分類」に大別されます。
また、本研究の分析対象の映画レビューは、以下四つの特徴があるため、先行研究の手法をそのまま適用することができません。
  1. 評価ポイントがユーザ・作品によって千差万別であること
  2. 名詞・動詞による修辞法を用いた表現が多くみられる
  3. 映画作品以外の話題に関する議論も含まれる
  4. 「いいね!」が付与される
研究では、大目的を,「ウェブ上の映画レビューをもとに,ユーザの一般的な主張・好みを含む作品評価の全体像を抽出する手法を提案すること」と定めた上で、以下の三つの要件を定義します。
  1. 作品の評価ポイントの抽出
  2. ユーザの主張・好みの評価ポイントの抽出
  3. 評価情報の可視化
本研究の提案手法を図2に示すように、まず、要件1と2を達成するために、評価ポイントの特徴度尺度「RFR(Relative frequency ratio)」と、レビューに付加された「いいね!」数による重み付け係数に基づくレビューの重要度尺度「WL(Weight of like)」を組み合わせた評価ポイントの重要度尺度「RFR-WL」を新たに考案しました。そこから算出される重要度によって評価ポイントを抽出し、その結果をもとに、評価ポイントを絞り込んで共起ネットワーク図を描画し、要件3の評価情報の可視化を達成します。


図2 修士研究の提案手法の概要

最後、提案手法の妥当性を検証するために、映画情報サイト「Filmarks映画」から,43本の戦争映画のレビュー・「いいね!」のデータをウェブスクレイピングによって取得し、実装して検証実験を行います。
その結果を、既存の特徴度尺度であるTFTF-IDFによる結果、及びRFRWL単独による結果と比較したところ、提案手法の抽出結果の精度が高い範囲で安定していることから、この手法が妥当であることが確かめられました。さらに、評価ポイントを絞りこんで共起ネットワークを可視化することによって、レビュアーの主張・好みを把握しやすくなることから、本研究の手法が妥当であることが示されました。


本研究は、レビューのテキストにおける顕在的な語彙の特徴に加えて、「いいね!」も取り入れることによって、潜在的なユーザの主張・好みを含む評価情報の抽出手法を提案しました。この手法を発展させることで、例えば読書レビュー・SNSにおけるコミュニケーションなど、自由記述文と「いいね!」などのユーザ評価を含む大規模データの分析にも寄与するものと考えています。

四月から,博士課程に入って研究を続けていきます。宜しくお願いします。