デジタルアース課題:「新しい本」を考える 学生作品(2022年度)


 授業課題「『新しい本』を考える」の作品リストを公開します。東京大学・教養学部(前期課程)総合科目「情報メディア基礎論」(2022年度Sセメスター 担当:渡邉英徳)の成果物です。ぜひ,ご覧ください。データサイズが大きいため,ロード完了までに時間が掛かることがあります。

この授業では,GISソフトウェアを用いて,オープンデータの可視化・ストーリーテリング型マップを作成する実践を通して,位置情報を含む情報メディアのありようについて考えます。最終課題では,この課題では「電子書籍」と「デジタルアース」のコンバージェンス(融合)によってもたらされる「新しい本」について考察し,デジタルツイン構築プラットフォーム「Re:Earth」を用いたプロトタイピングを行ないました。

7/25にオンライン講評会を実施。内山裕弥(国土交通省,Project “PLATEAU”)・古橋大地(青山学院大学地球社会共生学部教授)・筧康明(東京大学大学院情報学環教授)各氏にご参加いただき,活発な議論が展開されました。

「テクノロジーでつながる平和活動(Convergence of Peace Activities)」展 開催報告


東京大学は,8月6日〜7日の会期で,情報学環・学際情報学府の渡邉英徳研究室の企画・運営のもと,「テクノロジーでつながる平和活動(Convergence of Peace Activities)」展を東京大学ニューヨークオフィス(UTokyoNY)にて開催しました。本展は,UTokyo NYオフィスで開催する初の展示会となりました。

本展のテーマは、広島・長崎原爆の日とNPT再検討会議が重なるこの機会に、日米で営まれる多様な平和活動の「融合(コンバージェンス)」を、NPT再検討会議開催地のニューヨークにおいて生み出すことです。国境・イデオロギーを越えてテクノロジーでつながりあう、新たな世代の平和活動の端緒となることを企図しました。

現地のNPO・NGO,国連関係者を招いた内覧会では,日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の協力を得て,NPT再検討会議に参加中の木戸季市氏,和田征子氏,濱住治郎氏の被爆体験講話を実施しました。被爆者は展示中のデジタルアーカイブ・カラー化写真を活用しながら当時の体験について話し,来場者との対話も活発に行なわれました。

会期を通して150名以上の多数の来場者があり,たいへん活気に溢れる展示会となりました。国内外から10件以上のマスメディア取材を受け,大きな話題を呼びました。さらに,来場者とのオンライン交流も継続しており,本展示会を契機に,今後,さまざまなコラボレーションが生まれてくることが期待されます。(渡邉英徳)

NY exhibit showcases use of tech to connect, converge peace activities

 English / Japanese


An exhibition featuring digital archives of war damage in Hiroshima, Nagasaki and Ukraine, shown on a multiscreen large display, and other projects using cutting-edge technology to visualize and document war, is being held at the University of Tokyo New York Office from Aug. 6-7, 2022.

Event information:

  • Dates and time: Aug. 6-7, 2022, 10:00 a.m.–5:00 p.m.
    • Doors open at 1:00 p.m. on Aug.6. 
    • The number of participants will be limited for the A-bomb survivor lecture (in English) and exchange program (in Japanese) on August 6 from 11:30 a.m.  If there are too many applicants, a drawing will be held. Online streaming will also be available.

The exhibition, titled “Convergence of Peace Activities: Connecting and Integrating by Technologies,” features the work of Professor Hidenori Watanave of the University of Tokyo's Interfaculty Initiative in Information Studies and his lab, who conduct research on digital archives, information design and data visualization.

The event marks the first exhibition of the UTokyoNY Office, and coincides with the Nuclear Nonproliferation Treaty review conference held throughout August at the United Nations headquarters in New York, and the memorial days of the World War II atomic bombings of Hiroshima and Nagasaki.

The show’s theme is to create a “convergence” in New York — the site of the NPT review conference at the U.N. — that connects and integrates diverse peace activities in the U.S. and Japan, on the occasion of the conference and the atomic bomb memorial days. The hope is for the event to be the beginning of a new generation of peace activities that transcends national borders and ideologies, using technologies to help us connect with each other.

Featured works include the Watanave lab's digital archives series of war damage — comprising the Hiroshima Archive, Nagasaki Archive and Satellite Images Map of Ukraine —  using cutting-edge technology and displayed on a large screen, as well as an exhibit of colorized photographs of the mushroom clouds resulting from the atomic bombings of Hiroshima and Nagasaki, interactive virtual reality content of the moments immediately following the atomic bombings, and a display of the Archives of War Photographs joint research project with the Mainichi Newspapers and Kyoto University in Japan..

The event will also include the CO-OP Peace Map, a digital map of the Japanese Consumers' Cooperative Union’s peace activities, and an exhibit introducing the activities of the Heiwa Peace and Reconciliation Foundation of New York, to provide a venue to further enhance the exchange of peace activities between the U.S. and Japan.

Members of the Japan Confederation of A- and H-Bomb Sufferers Organizations, who will participate in the NPT conference, will be invited to the venue to deliver lectures (to be streamed online) and talk with visitors to the event.

Organized by:

  • The University of Tokyo

Project management by:

  • Hidenori Watanave Laboratory, Interfaculty Initiative in Information Studies, The University of Tokyo
    • Kenya Tamura, Masao Oi, Naomi Mikami, Nei Shu, Asaki Fujino, Tomoko Hiramoto, Misaki Katayama and Hidenori Watanave.

With the cooperation of:

  • Japan Confederation of A- and H-Bomb Sufferers Organizations
  • Japanese Consumers' Co-operative Union
  • Heiwa Peace and Reconciliation Foundation of New York
  • Nagasaki Foundation For the Promotion of Peace
  • The Mainichi Newspapers
  • Kobunsha Co., Ltd. 
  • Hiroshima Television Corporation
  • United Nations International School
  • Association for Regional Development and Global Human Resources Support
  • Taku Nishimae
  • Taichiro Fujino
  • Shinnosuke Komiya
  • VisionPort
  • EBUTLAB, Inc.
  • Eukarya, Inc.
  • (As of July 14, 2022)

Inquiries:

  • Hidenori Watanave Laboratory hwtnv_at_iii.u-tokyo.ac.jp

Sample works






Hidenori Watanave, Ph.D.

Born in 1974. Professor at Interfaculty Initiative in Information Studies, the University of Tokyo. Watanave’s research focuses on information design and digital archiving. He graduated from the Department of Architecture, Faculty of Science and Technology, Tokyo University of Science (diploma award), and  obtained his  Ph.D. in engineering from the University of Tsukuba. He has been an associate professor at Tokyo Metropolitan University, and a visiting scholar at the Edwin O. Reischauer Institute of Japanese Studies, Harvard University. 
“The Russian invasion of Ukraine that began under the COVID-19 pandemic has brought shock and confusion to the world, and the risk of an accidental nuclear war has increased,” said Watanave. “The NPT review conference, to be held under these circumstances, is charged with a mission of unprecedented importance. On the other hand, the rapid online communications progress made by the pandemic is changing the world by the ‘convergence’ of various technologies and activities in a bottom-up manner. Through this exhibition, we hope that visitors will feel the message that hibakusha (survivors of the Hiroshima and Nagasaki atomic bombings) leave to future generations, and the energy of young people’s activities forging beyond various barriers.”

“Convergence of Peace Activities” テクノロジーでつながる平和活動 展の開催

日本語 / English


東京大学大学院情報学環 渡邉英徳研究室は、NPT(核兵器不拡散条約)再検討会議を開催中のニューヨークにおいて「Convergence of Peace Activities:テクノロジーでつながる平和活動」展(8月6〜7日)を開催します。本展は、UTokyo NYオフィス(東京大学ニューヨークオフィス)で開催する初の展示会となります。

期日・場所

  • 2022年8月6~7日 10:00 – 17:00
    • 8/6の一般公開は13:00より。
    • 8月6日 11:30〜(現地時間)の被爆体験講話(英語)・交流会(日本語)は参加人数を制限します。希望者多数の場合は抽選を行ないます。オンライン配信も予定しています。
  • UTokyo NYオフィス(東京大学ニューヨークオフィス)
  • 入場無料:参加登録フォームからの申し込みが必要です

本展のテーマは、広島・長崎原爆の日とNPT再検討会議が重なるこの機会に、日米で営まれる多様な平和活動の「融合(コンバージェンス)」を、NPT再検討会議開催地のニューヨークにおいて生み出すことです。国境・イデオロギーを越えてテクノロジーでつながりあう、新たな世代の平和活動の端緒となることを企図しています。

本展では、渡邉英徳研究室が取り組む「ヒロシマ・アーカイブ」「ナガサキ・アーカイブ」「ウクライナ衛星画像マップ」など、先端テクノロジーを活用した戦災のデジタルアーカイブを、大型ディスプレイで展示します。さらに、広島・長崎原爆の「きのこ雲」のカラー化写真、原爆投下直後のVRコンテンツ、毎日新聞社・京都大学との共同研究「戦中写真アーカイブ」などの展示・体験コーナーを設けます。

加えて、日本生協連の平和活動を発信するデジタルマップ「CO・OP PEACE MAP」や、NPO NY平和ファウンデーションなどの紹介展示を通して、日米の平和活動の交流の場をつくります。また、NPT再検討会議に参加する日本被団協のメンバーを会場に招待し、被爆講話(オンライン配信予定)やイベント参加者との語らいの場を設ける予定です。

主催

  • 東京大学

企画・運営

  • 東京大学大学院情報学環 渡邉英徳研究室
    • 田村賢哉,大井将生,三上尚美,周寧,藤野朝咲,平本智子,片山実咲,渡邉英徳

協力

  • 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)
  • 日本生活協同組合連合会(日本生協連)
  • NY平和ファウンデーション
  • 長崎平和推進協会
  • 青山学院大学 古橋大地研究室
  • 国連国際学校
  • 株式会社毎日新聞社
  • 株式会社光文社
  • 一般社団法人 地域創生グローバル人材支援協会
  • 広島テレビ放送株式会社
  • 西前拓
  • 藤野太一朗
  • 小宮慎之介
  • VisonPort
  • 株式会社エバラボ
  • 株式会社ユーカリヤ

お問い合わせ先

  • 東京大学大学院情報学環 渡邉英徳研究室
  • E-mail: hwtnv_at_iii.u-tokyo.ac.jp

展示作品の例






主催者コメント

COVID-19禍のなか始まったロシアの軍事侵攻は、世界に衝撃と混乱をもたらしており、偶発的な核戦争が起きる危険性が高まっています。この状況のもと開催されるNPT再検討会議は、かつてない重要な使命を帯びています。一方、COVID-19禍により進んだ急速なオンライン化は、さまざまな技術・活動をボトムアップに「融合」し、世界を変えつつあります。本展を通して、被爆者が未来の世代に託すメッセージと、さまざまな壁を越えて力強く進んでいく、若者たちによる活動の息吹を感じていただきたいと思います(渡邉英徳)。

渡邉英徳研究室について

東京大学大学院情報学環 渡邉英徳研究室では、デジタルアーカイブ、情報デザイン、データビジュアライゼーションなどの研究を行なっています。本展においては、特に戦災をテーマとしたデジタルアーカイブズ・シリーズなどの研究成果を展示します。

渡邉英徳プロフィール

1974年生まれ。東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授。東京理科大学理工学部建築学科卒業(卒業設計賞受賞)。筑波大学大学院システム情報工学研究科博士後期課程修了、博士(工学)。首都大学東京システムデザイン学部 准教授、ハーバード大学エドウィン・O・ライシャワー日本研究所客員研究員などを歴任。著書に「データを紡いで社会につなぐ」「AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争」(共著)など。 

(参加者募集)デジタルアース課題:「新しい本」を考える オープン講評会


東京大学・教養学部(前期課程)総合科目「情報メディア基礎論」(2022年度Sセメスター 担当:渡邉英徳)のデジタルアース課題「新しい本」を考える のオープン講評会を実施します。この課題では「電子書籍」と「デジタルアース」のコンバージェンス(融合)によってもたらされる「新しい本」のありかたについて考え,デジタルツイン構築プラットフォーム「Re:Earth」を用いたプロトタイピングを行なっています。

この課題は,東京大学大学院情報学環「講談社・メディアドゥ新しい本寄付講座」の研究テーマと連動したものです。当日は,選抜した作品のプレゼンテーションと,ゲストレビュアーとのディスカッションを行ないます。ぜひ,登録フォームからご参加ください。

日時

  • 2022年7月25日(月)16:50 - 18:35
  • Zoomによるオンライン開催
  • 参加申込フォームはこちら
    • 先着300名。参加登録後,メールアドレスにURLをお送りします。

ゲストレビュアー

  • 内山裕弥(国土交通省,Project “PLATEAU”)
  • 古橋大地(青山学院大学地球社会共生学部教授)
  • 筧康明(東京大学大学院情報学環教授)

ArcGIS Onlineを用いたオープンデータの可視化・学生作品(2022年度)


授業課題「ArcGIS Onlineを用いたオープンデータの可視化」の作品リストを公開します。東京大学・教養学部(前期課程)総合科目「情報メディア基礎論」(2022年度Sセメスター 担当:渡邉英徳)の成果物です。今年度からはストーリーテリングマップとして作成しています。ぜひ,ご覧ください。

課題内容:
  • S1ターム(4〜5月)で取り組む
  • 自治体のオープンデータを「2種類以上」用いたマップを作成
  • マッピングに加えて「解析」を用いて,データどうしの関係を可視化
  • 完成したマップをストーリーテリング・コンテンツとして公開

戦前・戦中の報道写真を用いたストーリーテリング・デジタルアーカイブのデザイン

戦前・戦中の報道写真を用いたストーリーテリング・デジタルアーカイブのデザイン」の研究プロジェクトがスタートしました。毎日新聞社・東京大学大学院渡邉英徳研究室・京都大学東南アジア地域研究研究所の共同研究であり,科学研究費助成金(基盤B)の採択課題です。

本研究では,社会に“​​ストック”されていた,戦前・戦中の特派員写真の希少資料を“フロー”化する情報デザイン手法を明らかにします。まず,資料のデジタル化と分析を行ない,メタデータを付与してデジタルアーカイブを構築。次いで,デジタルアースを用いたストーリーテリング型の可視化コンテンツを作成します。さらに紙面連動や大型端末によるワークショップの実践を通して,多面的な“フロー”の生成を試みていきます。


以下はプロトタイプのデモムービーです。

特派員・安保久武氏の足跡

業務/個人で撮影した写真の分布


5/18,東京大学情報学環の福武ホールにて共同研究発表会「時空を重ね 未来へ紡ぐ」を開催しました。発表会と研究内容についての詳細については,毎日新聞の記事をご覧ください。



豊後府内での小中高生へのワークショップ:デジタルアースを媒介とした主体的な歴史発信

 


 こんにちは。東京大学 大学院 学際情報学府 文化・人間情報学コースの大井将生です。

この投稿では、大分市で開催された「ジュニアガイド」ワークショップについて報告させていただきます。

 大分市教育委員会文化財課と東京大学大学院情報学環の主催で行われたこのワークショップは、大分市のユニークな歴史実践の一つである「FUNAIジュニアガイド」の皆さんに、デジタルアーカイブやデジタルアースを媒介として、地域の歴史資料のフロー化(発信)の新しい手法を学び、考えてもらうことを目指して行われました。

 小学生・中学生・高校生から構成される「FUNAIジュニアガイド」は、厳しい検定試験を突破した豊後府内の歴史のスペシャリストとして深い知識を有しているだけでなく、「自分達の地域の歴史・魅力を多くの人に伝えたい」という思いを持っています。そんな地域の未来を担う歴史家たちが、より楽しく、より輝くための一助となることを願い、ワークショップは以下のようにデザインされました。

・情報デザインの専門家である東京大学の渡邉英徳先生による、「クライナ衛星画像マップ」や「忘れない」などの過去ー現代ー未来を繋ぐ情報の可視化についてのレクチャー

・豊後の中世史の専門家である名古屋学院大学の鹿毛敏夫先生による、府内の人々の生活について物や人、そして町の構造という視座から考えるレクチャー

・筆者による、Re:earthを活用した「地域の魅力を可視化し、発信する、探究学習のアウトプット」のあり方についての問題提起とデモンストレーション

・横浜国際高校の徳原拓哉先生による、実際のアウトリーチ活動を想定した「伝える」ための考察を行う対話型アクティブラーニングと子どもたちによる発表活動

 上記ワークショップは、中世の宗教史や対外関係史の専門家である東京大学の岡美穂子先生のマネジメントのもと、坪根伸也課長はじめ大分市文化財課の皆さんによる資料やデータの整理・提供・二次利用手続きや当日の運営という協力を得て行われました。
 このように、地域の歴史資料を「どのように残し、繋ぎ、表現し、伝えるか」という視点で、歴史学・情報学・教育学の専門家と自治体の職員、そして小学生・中学生・高校生が一堂に会して議論することで、地域の資料に新たな意味が付与され、地域の内外や未来に継承されるというワークショップデザインは、他の自治体でも参考にしていただける「官学連携」のモデルケースになるのではないかと考えています。

 さらに、ワークショップのために制作した教材は、学校教育の目線に基づいたキーワードや学習指導要領コードなどの「教育メタデータ」を付与し、相互運用性・機械可読性の高いIIIFInternational Image Interoperability Frameworkを用いて「多様な資料を活用した教材アーカイブ」にて公開することで二次利用可能なオープンデータとして提供しています(図)。
(TOPページ>ワークショップ成果>自治体ごとのWS成果>大分市)

   図. 教育メタデータを付与し、IIIFビューアで閲覧・ダウンロード可能にしたW.S.教材

 今後も、各地域の魅力溢れる歴史資料を、多様な属性の専門家の連携・協働によって全国の地域学習・生涯教育の現場や小学校・中学校・高等学校にフロー化できるよう、研究と修養に努めたいと考えております。

「ウクライナ衛星画像マップ」更新中


ロシアによるウクライナ侵攻が開始された直後の2月25日より,Maxar Technologiesなど,民間の衛星画像企業が配信する画像,世界中の有志が作成するフォトグラメトリ,NASA・ESAなどの機関が配信するマルチスペクトルなどを網羅したデジタルマップを作成し,更新を続けています。青山学院大学・古橋大地研究室との共同プロジェクトです。

プロジェクトの趣旨については文春オンライン東京大学などの記事を,日々の更新内容についてはTwitterでご確認ください。最新のメディア報道についてはこちら



デジタルアーカイブ資料と児童生徒の 「問い」の接続・構造化に関する研究



こんにちは。

東京大学 大学院 学際情報学府 文化・人間情報学コースの大井将生です。
この投稿では、私が取り組ませていただいた修士研究について報告させていただきます。

私は、探究学習におけるデジタルアーカイブ資料と児童生徒の「問い」の接続・構造化に着目して研究を行いました。

デジタルアーカイブの主眼は「保存」から「活用」へとシフトしつつあり、アーカイブされた資料の教育活用への期待が高まっています。また、資料の活用に際してはフロー化した資料に新たな価値を付与して「知の循環」に還元することが求められています。教育学の文脈では、日本の児童生徒の情報収集・活用能力に課題があることが指摘されており、図書館や博物館等の資料を探究的に収集・活用する学習が必要とされています。

探究学習の先行研究においては、「問い」を構造化し、主体的に資料を収集する学習の重要性が示されてきました。しかしながら、「問い」と資料が教師から一方向的に与えられる事例が多いこと、さらに一次資料の活用事例が少ない点に課題がありました。またデジタルアーカイブの活用に関する研究の多くは、単一のアーカイブを対象としているため、扱う資料が限定的で、汎用性が高いとはいえませんでした。さらに、既存のアーカイブはWeb上に散在しており、アクセシビリティの課題を解決する必要があります。

これらの課題を解決することによって、児童生徒が「問い」に基づいて多様な資料を活用する探究学習が可能になると考えられます。そこで本研究では、デジタルアーカイブ資料と探究学習における児童生徒の「問い」を接続し、構造化することを目的として研究を進めました。

そのための手法として、まず児童生徒が自身の「問い」に即した資料収集を通して学びを深める「キュレーション授業」を開発しました。この際、多様な資料のメタデータを横断検索することが可能な「ジャパンサーチ」を用いて、学習資料の網羅性を高めるとともに、協働的な学びの中で「問い」と資料の接続・構造化を支援する「協働キュレーション機能」を用いることで、複数のユーザがメタデータを保持しながらキュレーションを行えるようにしました。


この提案手法を用いて、小学校・中学校において指導要領に則した連続的な実践を行いました。

    


    

実践の結果、以下のことが認められました。

・質問紙では、「問い」や資料をもとに学習を行い、自身の考えを構築することの重要性について述べる記述が、事前よりも事後に多く認められました。
・ルーブリックを用いたリフレクションでは、「情報リテラシー」と「主体性」の観点について、学習の後半に向けて自己評価が上昇する傾向がみられました。
・教員による学習成果物への評価では、学習初期に比べて、学習終盤への評価点が有意に高くなったことが明らかになりました。




これらのことから、自身の「問い」を基点とした主体的な学びが創発され、「問い」に即して収集した資料をもとに意見を構築する力が向上することが示唆されました。以上より、デジタルアーカイブ資料と探究学習における児童生徒の「問い」の接続・構造化が促進されたことが認められました。

本研究の成果は、探究学習におけるデジタルアーカイブ資料と児童生徒の「問い」を接続・構造化する学習モデルを示したことにあります。また、本研究で開発した手法は、児童生徒の「問い」と協働的な学びの成果という新たなコンテキストがメタデータとして付与された状態で構造化された資料をアーカイブすることを可能にするため、デジタルアーカイブ社会における「知の循環」に貢献しうると考えています。

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私の研究は、学際情報学府、そして渡邉研でしか成し得なかったと考えています。

デジタルアーカイブや記憶の継承、情報デザインやビジュアライゼーションに関心があるという点で緩やかな学術的つながりを持って集った渡邉研のメンバーは、専門やバックグラウンド・職業や年齢なども実に多様で、初めてミックスジュースを飲んだ時のような驚きと感動を伴うステキな化学反応がいつも生じています。
個性豊かでユニークなメンバーには、いつも研究に関する議論や雑談、コラボレーション研究や協働制作などで楽しく充実した時間と活力をもらっていました。

渡邉先生にはいつも鋭く深いご助言をいただくことで研究を推進するご支援をいただきました。また、実践に注力しすぎてしまう私にとっては、渡邉先生の実践・社会実装を重んじ、人々の心を大切にして資料や思いを未来に繋ぐ視座・スタンスが何よりもの救いであり、いつも感銘を受けていました。「自分がやりたいようにやるのがいいですよ」と何度も暖かく背中を押していただいたこと、深く感謝しています。

その他にも多くの方に支えていただき、これまで研究を行うことができました。
この場をお借りして深く感謝申し上げます。
いただいたご恩をお返しするにはまだまだ力量不足ですが、今後も研究と修養に邁進することで、巡り巡って少しでも社会に還元できるものができればと考えております。

まだまだやりたいこと、実現できていないことがたくさんあります。
博士課程進学後も、研究を続けて参ります。
以後の研究も暖かく見守っていただけますと幸甚に存じます。
引き続き何卒よろしくお願いいたします。

渡邉研に少しでも興味関心をお持ちの方は、ぜひ気軽に遊びにいらしてください。

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ハイブリッドイメージの簡易な制作手法の研究

こんにちは。

東京大学大学院 学際情報学府 文化・人間情報学コース修士2年の藤原寛奈です。
この投稿では、自分の修士研究についてご報告します。

私は、ソーシャルディスタンスの意識化という動機から距離に応じて見え方が変化する錯視である「ハイブリッドイメージ」に着目しました。
ハイブリッドイメージとは、空間周波数の⾼いイメージと低いイメージを単⼀の画像に合成したもので、画像からの遠近によって2 つの画像が切り替わって見えるという特徴を持ちます。

修士研究では、数学的素養がなくとも、汎⽤的な画像処理ソフトを⽤いて
容易にハイブリッドイメージを作成できる⼿法の提案を目的に取り組みました。
そのために、プロトタイピングを通して開発した⼿法を
ワークショップ⽤に整理し、フローチャート化しました。

そして、アセットとして配布を想定しPC でハイブリッドイメージを制作する課題を設定したワークショップの実施を実施して、手法の検証を行いました。

ワークショップの結果、参加者は数学的素養がなくともハイブリッドイメージが制作でき、バリエーション豊かな成果物となったことから、目的は達成されたと考えます。

この研究の貢献は、汎⽤的な画像処理ソフトを⽤いて誰でも容易にハイブリッドイメージを作成できる⼿法を提案したことで、これは、ソーシャルディスタンスの距離感を体感できる画像など錯視を使った新たな表現が広がる⼀助になると考えます。

しかし、簡易ですが、画一的な表現になりやすいというのが、本研究の限界です。
今後の課題として、追加検討した手法の更なる検証や、実際にAdebeのアセットとして配布し、現場目線での改良をするなどが、考えられます。

最後に、私が制作した試作品を一部紹介します。
まず、ソーシャルディスタンスの距離感を体感できるスマートフォンの背景画像として制作した2作品です。
近くでは、「暑中お見舞い申し上げます」「わくらばに天の川波よるながら明くる空にはまかせずもがな」というメッセージが見え、右に90度傾けて離れると「2m」という文字が見えるようになっています。「2m」は、ソーシャルディスタンスとして、離れるべきとされる距離です。
主に、このスマートフォンの背景画像制作を通して、制作手法を検討しました。




次に、パソコンで鑑賞することを想定した作品を紹介します。
近くでは方言の意味、離れるとその意味を持つ方言が見えるようになっています。
こちらは様々な方言を対象に、ワークショップを行いました。
ワークショップを行うために、Photoshopのブラシ一本で製作できるようにするなど、スマートフォンの背景画像製作で提案した手法を、より簡易的に整えました。


その後、ワークショップのために整理した手法で製作した作品が、簡易ですが、画一的な表現になりやすかったため、表現の幅を広げるための追加検討を更に続けました。
こちらの2作品は、パンク、グラフィティをイメージしたものです。
近くでは「0ZERO PUNK」「Close To Me」、離れると「2m」が見えるように作成しました。

最後に、ユーザテストを行った際に、使用した作品を紹介します。こちらは、クイズ形式で行い、このブログの最後に正解を書きたいと思いますので、良ければ実際に体験してみてください。
(錯視を体感しやすいようにユーザテストで指定した条件を書きますが、厳密に条件を守らなくとも近づいたり離れたりすれば、錯視は起こります!余裕があれば条件を気にしてみてください!)

ユーザテスト風クイズ (正解はこのブログの最後)
画像を13インチのパソコンに全画面で表示してください。
この時、液晶は明るくし屋内で行ってください。また、画像は、できる限り正面から見て、目を細めたりせず、はっきりと目を開いた状態で見て下さい。

Q1,液晶から40~50cm(普段タイピングしている程度の距離)離れた時、読める文字列は何ですか?
Q2,液晶から1.5~2.0m程度離れた時、読める文字列は何ですか?

の作品も、実際に画面から近づいたり遠ざかったりして、画像の変化を楽しんでもらえれば嬉しいです。


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私は、大学院から2年間、渡邊研にお世話になりました。
他大学から来たため、右も左もわからない中、研究室の皆様には本当に良くして頂きました。
本当に皆様のおかげで、どうにかこの2年間を過ごし、修論まで辿り着くことができました。
特に、様々な分野の専門を持つ方々と一緒に学べたことは、とても貴重な経験でした。
また、制作系の学部出身で、論文にあまり触れてこなかった私にとって、修論を書くために、自分の制作の構造を紐解き、言語化するために試行錯誤したことは、とても大きな学びとなりました。この貴重な経験は、今後の人生にも生かしていきたいです。
大学院進学にあたり、学部時代の専攻的に、とても選択肢が少なかった中、制作系でも受験できる数少ない大学院として、学府を選びましたが、デザインで論文を書きたかった自分にとっては、学府の渡邊研に来れた事は自分が思っていた以上に良いもので、自分の選択は間違ってなかったと思えます。

コロナ禍で思い描いていた大学院生活とは異なっていましたが、とても充実した2年間でした。
就職で研究室を離れますが、今後とも研究室の皆さんには、ぜひ仲良くして頂きたいです。
今までありがとうございました。これからも、よろしくお願いします。

藤原
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正解:Q1「E2cB7」Q2「F7nPY」


Linked Open Data Challenge 2021:最優秀賞/コミュニティ賞など受賞のご報告

こんにちは。

東京大学大学院学際情報学府 文化・人間情報学コースの大井将生と申します。

この度、Linked Open Data Challenge 2021のAwardにて、以下の2つの研究が受賞いたしましたことを謹んで報告させていただきます。


・最優秀賞 /

・プラチナスポンサー賞_オラクル賞:
 
(受賞対象)

(受賞者)
  高久雅生、大井将生、榎本聡、江草由佳、有山裕美子、阿児雄之

(審査講評)
GIGAスクール構想が推進される中で、デジタル庁が中心となり「教育データ利活用ロードマップ」を公開しており、日本の教育における「教育DX」に注目が集まっています。 そうした中で、初等・中等教育の学習指導要領と教育要領の内容・コード表という教科の設計図がLOD化されている意味は大きいと思います。 指導要領及びコードにURIが付与されるので、「教科書LOD」などとの連携による教育データの利活用の活発化が期待されます。

学習指導要領という用途の広い情報のモデル構築に貢献されているだけでなく、各リソース URI に対する HTML ページや英語の概要ページ、GitHub を使った issue 管理やサイト公開など、丁寧かつ独創的な LOD の作成手法であると評価しました。 今後、外部データとの連携や SPARQL エンドポイントの公開など、LOD 構築の見本となる活動として発展されることを期待しています。



・コミュニティ賞:

本作品には、学びのネットワーク構築を目指して、図書館・博物館・文書館などの多様な資料を活用することで教材コンテンツを整備する活動の成果物がまとめられています。 オープンデータを利用した教材コンテンツを整備し、それらの活用を広める活動は、オープンデータの価値を高めるとともに社会における普及と整備促進に大いに役立ちます。 さらに、IIIFに対応した活用性の高いアーカイブを構築していることも評価しました。今後、継続的な活動でコンテンツが拡充されること、また学習指導要領コードなどと連携したLODとして発展することを期待します。