はじめに
どうもこんにちは、修士2年の小宮です!このブログで書かせていただくのは今回が最初で最後ですが、自身の研究と作品について書かせて頂きたいと思います。
簡単に自己紹介をさせてもらうと、私は学部からこのインダストリアルアートコースで学び、修士もそのまま進学しました。
学部4年次の研究室はインタラクティブアートについての研究を行い、ダンサーが踊りによって音楽を変えられるデバイス(GROOVE)を作っていました。
その後、修士からはこちらのネットワークデザインスタジオに所屬し、Web技術やデザインを中心に学び、4年次に学んだハードウェアの技術と掛け合わせながらプロダクトを作っています。
詳しい自己紹介はこちらもよければ御覧ください
その中で生まれたのがこれから紹介する「PetaPeta」と「smarTcane」です。
どちらもウェアラブルデバイスを中心としたプロダクトであり、特に意識は全くしていなかったものの、気がついたら3年間ハードウェアの技術を使いっぱなしでした笑
それではそれぞれの作品の紹介に移ります。
作品・研究紹介
①PetaPeta
サイトはこちら!
PetaPetaは靴の中敷型デバイスとスマートフォンを使って遊ぶ鬼ごっこゲームです。
鬼ごっこというとタッチしたり、されたりを繰り返しながら門限になったら終わり…のような曖昧なゲームだと思います。
そこで1つルールを作りました。
それは
「制限時間内に一番長い距離を逃げた人が勝ち」
つまり、時間が決まっているのでちゃんと終わりが来ます!笑
ただこれだと、足の早い人が有利になってしまい、今までの鬼ごっこ同様足の速いモテる男子が勝ってしまいます。
それではテクノロジーの意味がありません。
そこでインソールデバイスの登場です。
インソールデバイスは走っているのか歩いているのかを計測し、もしプレイヤーが歩いているとプレイヤーの持っているスマホの地図上に自分の足跡がでてしまう
のです。
すると、自分の位置が鬼を含む全プレイヤーにバレてしまうという仕組みです。
一方、鬼でいる間は走っても歩いても一切ポイントが入らず、どんどん他のプレイヤーに差を付けられてしまいます。
なので、地図上の足跡を頼りに他のプレイヤーをいち早く捕まえに行きましょう!
鬼のタッチ自体も直接体を触ってタッチするのではなく、Bluetoothを用いた近距離通信により、3mほど近づくとタッチとなります。
人が多いところでは誰からタッチされたかもわからないかもしれません…
これで知らない人ともPetaPetaを遊ぶことができるのです。
PetaPetaのルール
このPetaPetaを2回ほどイベントで開催し、多くの方に楽しんでいただきました!
地域のイベントなどでの開催も面白いと思っているので、「うちでも開催して!」というお声がけはいつでもお待ちしております!
UIはこんな感じです!
②smarTcane
(Rendered by Chihiro Goto)
そもそも僕がなぜこれを作ろうとしたかの背景として、研究室の別プロジェクトにて、佐賀大学医学部とのプロジェクトの時に、医学の現場のことが知りたく、先生にお願いをして1週間ほど泊まり込みであらゆる医学の現場を見学させていただきました。
その際に、なにかデザインやテクノロジーで解決できることはないかと観察をしていたところ、リハビリの現場にて理学療法士の先生から杖の歩行の際は理学療法士が目視で歩けているかを判断しているという現状を聞くことが出来ました。
これをもう少し深掘りしていくと、目視で判断していることにより、
・療法士により判断が変わってしまう
・定量的なノウハウが残せない(論文など)
という課題が見えてきました。
この課題に対しての研究はいくつかあるものの、それらは高価な機器を用意しなくてはならなかったり、有線による計測で患者が転ぶリスクがあるものがほとんどでした。
そこで僕は、杖からのみのデータで歩行時の体動が計測できないかを考え、3軸加速度センサとロードセル(体重計についているセンサ)とBluetoothを搭載した「smarTcane」とそのデータをリアルタイムに見ることのできるiOSアプリケーションを作ることにしました。
写真は今回作成したプロトタイプ
理想の歩行というのは立脚期(左足を基準として左足を着いてから離れるまで)と遊脚期(左足を離してから着くまで)の比率が6:4〜5:5のときとされています。
今回の研究では、歩行時に杖から取得したデータを解析し、実際に利用可能かどうかを検証しました。
検証にはグラフのピーク値を検出するアルゴリズムとFFT(高速フーリエ変換)によるパワースペクトラム解析を用いました。
グラフはロードセルと加速度センサの微分値の絶対値の和を横軸を時間として出したもの
これにより、無線でかつ定量的に歩行計測ができるスマートな杖がカクヤスでできれば!と思っています
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後輩へ
まず、僕はこの研究室ではかなり自由にやらせていただき、先生の手も一番煩わせた生徒だと思います…でもそれだけやりたいことができる空間であり、先輩、後輩、同期のよい仲間がいる研究室でもあります。
プロダクトを提案の形までではなく、実装して動くものまで作ることができるのはエンジニアリングのおかげであり、この研究室の特徴でもあります。
そしてチームでプロダクトを作るということは多くの壁にぶち当たり、今までの個人技が通用しないことがたくさんあると思います。
しかし、チームでプロダクトを0から作るというのはかけがえのない経験であり、ものづくりのあらゆる側面を学ぶ機会を与えてくれます。
自分の知らない分野や他の職種についても触れる機会だって生まれます。視野が広がることしかありません。
柄にもなく真面目なこと言ってしまいましたが、これだけはこの6年間で正しかったと言えると思います。
「良いプロダクトは良いチームから。」