皆様、こんにちは。渡邉研で、テクノロジーを活用した原爆記憶の継承や、平和学習について研究を進めています、博士課程1年の片山実咲です。
この度、日本政府の拠出により、国連軍縮部(UNODA)が設立した"Youth Leader Fund for a World without Nuclear Weapons"(ユース非核リーダー基金)の第1期生として参加する世界の若者100名に選出していただきました。
まだまだ、平和について何かを語れる立場にはない私ですが、より広い視野で問題を捉えるために貴重な機会を頂戴しました。気を引き締めて取り組んでいく所存です。
出典)Misaki Katayama:X profiel"Youth Leader Fund for a World without Nuclear Weapons"とは
出典)https://www.disarmamenteducation.org/index.php?go=education&do=training-ylf
本プログラムは、2022年8月に開催された第10回核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議において、岸田文雄内閣総理大臣が発表した「ヒロシマ・アクション・プラン」の一環として、日本政府が拠出を表明し、実際の運用を国連軍縮部が担っているものです。
プログラムは2023年から2030年まで実施予定で、対象者は18歳以上29歳以下です。
今年度は2000を超える候補者の中から第一期生として100名が選ばれました。
プログラムの主な目的は下記の2つです。
- 核兵器国、非核兵器国の双方から未来のリーダーを日本に招き、被爆の実相に触れてもらうこと
- 政府、市民社会、教育、研究、メディア、産業等の分野からの未来のリーダーや主要な役割を担う多様な人材による、グローバルなネットワークを作ること
プログラムの修了後は、次期参加者の研修・育成に主要な役割を担う予定で、核廃絶に向けた未来のリーダーによるグローバルなネットワーク作りが目指されています。
参考)外務省:「ユース非核リーダー基金」プログラム参加者の募集開始https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_009715.html
2022年NPT再検討会議に参加した際の様子
なぜ軍縮なのか
国際連合は、軍縮を国際平和と安全の維持に向けた取り組みの基本的な要素と位置づけています。軍縮は、国連の柱である、平和と安全、人権、持続可能な開発と密接に結びついている集団安全保障システムの重要な側面と捉えられています。
軍拡競争の防止、紛争の可能性の低減、国際規範の強化、軍事的透明性の促進、平和の支援、人権侵害者への武器移転の防止、民間人の保護、持続可能な開発の促進、武力暴力の緩和などが重要なポイントとしてあげられます。
武力紛争の発生を減らし、軍拡競争の激化を防ぎ、世界の安全保障を強化する軍縮は、国連の使命に不可欠なものです。
これまでの国連事務総長は軍縮に関して重要な声明を発表し、世界の平和と安全保障にとっての軍縮の重要性を強調してきました。
例えば、第9代国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏は、2018年のAgenda for Disarmament "Securing our common future"(軍縮のためのアジェンダ)を発表した際に、「核兵器の廃絶は国連のDNAだ」とも発言しています。
世界で紛争が頻発・継続し、情勢が不安定になるなか、核兵器が利用されるリスク・緊張が高まっています。このような時勢だからこそ、軍縮と平和について社会全体で再確認する必要があるのではないでしょうか。
参加者の様子
今回のプログラムは2000以上の応募の中から100名が選出されています。国籍や職業、ジェンダー、得意な領域、関心分野など大変多様で常に驚き続けています。(ご関心のある方はXで#YLF と検索してみてください。)
日本国籍を保持する参加者は2名。中でも広島で生まれ育った被爆3世は一人かと思われます。広島出身の被爆3世として国際的なリーダー育成プログラムに参加することができることを大変有難く思います。これまで出会った方々、言葉や想いを託してくださった方々のことを忘れず、しっかりと学び、伝え、役割を果たしていきたいと思います。
参考)参加者の国籍の多様さを知っていただきたく、一覧にまとめてみました。
実際のTrainingの様子
- インタラクティブな学習資料、評価テスト、フィードバックサーベイ
…それぞれ10日間のペースで進捗が管理される - ライブ・ウェビナー
…軍縮、不拡散、軍備管理の専門家から直接学び、参加者同士で知識を交換する - オンライン・ライブ・ワークショップ
…ワークショップ形式の学習 - オンライン・フォーラムを通じた双方向ディスカッション
…コース期間中、オンライン・ファシリテーターが指導 - コース終了後の最終試験
↑ 個人のDash Bordの様子:このような感じで進捗と成績が管理されています。
<実際にコースを受けての感想>
セクション1つだけでもなかなかの量があります。例えば上記のInstruction to Disarmentを受講して試験を受けるだけで約3時間ほど。何より、専門的な英語が難しい。。。
関連コンテンツなど(国連文書など)も豊富で、それらをきちんと読むともっとかかるのではないでしょうか。
10日ペースで進捗が管理される&受講だけではなく、参加者ディスカッション用オンラインの掲示板に3つ以上の投稿あるいはコメントをして議論に参加することが義務付けられています。
Launch Eventが開催されました(2023年12月18日)
最後に
Youth Leader Fund for a World without Nuclear Weapons Programが始まって約2週間の様子を紹介させていただきました。
プログラムのイメージを持っていただくことができたでしょうか。想像以上にハードで緊張感のあるトレーニングですが、タレンテッドな参加者や豊富なプログラムコンテンツに、国連の本気を垣間見ています。
いま、世界各地で武力紛争が激化しています。少し気を抜くと勝手に涙が溢れてきそうな毎日が過ぎていきます。SNSで流れてくる光景に、言葉を失います。自分に何ができるのか、考えても考えても、どうしても自分の無力さへの気づきに揺り戻されていきます。
世界から集まったユースがそれぞれのバックグラウンドと得意分野を活かして、世界の軍縮にどのように働きかけることができるのか。このような情勢だからこそ、時間を使い、丁寧に考えていきたいと思います。
定期的に本プログラムの様子を紹介していきたいと思います。引き続きご指導賜れますと幸いです。
片山実咲