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「押韻」の歴史的変遷と現代における「ライミング」活用の架橋


こんにちは、修士2年の岸岡信伍です。
今回は、修士研究の紹介をさせていただきます。

みなさんは「ライミング」という言葉はご存知でしょうか?
あまり身近な言葉ではないかもしれません。
では、「押韻」という言葉はどうでしょう?
「押韻」は「ライミング」を日本語にしたものとされていますがこちらもピンと来ないかもしれません。
一応みなさんは「押韻」を学校教育で漢詩の勉強をするときに一度習っているはずです。
偶数句末で同じ音の漢字が置かれるだとかそういうものです。
「押韻」は“詩歌などで,同一または類似の音韻をもった語を一定の箇所に用いること.韻を踏むこと”とされており漢詩だと「深(しん)」「心(しん)」「金(きん)」「簪(しん)」のような(in)の音で共通するものが韻だということになります。
日本語の場合は
 ・おとな(ooa)
 ・ことば(ooa)
と、(ooa)の母音が共通しているこれらの言葉が韻であり、韻を繰り返し用いることが韻を踏む「押韻」ということになります。
学校で扱う「押韻」が漢詩のみであることからも、韻を踏むという表現は日本の文学ではあまり活用されず顕著な発展をみせていません。
一方、欧米言語で「ライミング」はシェイクスピアの時代にはすでに確立されており、現在の活用の幅は文学だけでなく歌謡曲、童謡、さらに教育とかなり広いものになっています。
ところが、1980年代にヒップホップミュージックが輸入した後、ラップで韻を踏むことを「ライミング」とし、日本語での韻表現は発展していきます。そして現在の日本語ラップでは韻を踏むことは当たり前になっています。
私の研究の目的は、日本で定着しなかった「押韻」と、日本語ラップで当たり前に活用されるようになった「ライミング」を結びつけて論じることです。

このブログでは論文の構成についてざっくり説明させていただきます。
図 論文の構成

 第2章では、九鬼周造氏の「日本詩の押韻」を主な関連資料としてヒップホップミュージック輸入以前の文学における日本の「押韻」の変遷を辿り、「押韻」を再解釈しました。日本で「押韻」は定着しませんでしたが、文学で活用するための試みは何度かされていきました。「日本詩の押韻」では、日本の「押韻」の歴史的事例と欧米言語の韻表現の事例から、日本語詩における「押韻」発達の可能性と採用のための考慮について論じられています。

 第3章では、「押韻」の再解釈から、ヒップホップミュージック輸入後の「ライミング」発展の変遷を読み解き、従来の「押韻」と日本語ラップにおける「ライミング」の架橋を試みました。九鬼氏の「押韻」の解釈を日本語ラップの「ライミング」の変遷に当てはめることで、日本語での韻を踏むことの共通点、また「押韻」に対する「ライミング」の発達における有利な点を得ることができました。
 第4章では、欧米言語、特に英語におけるライミングの事例をサーベイし日本語での「ライミング」を明らかにしました。これにより、文化の違いや言葉の性質の違いによる「ライミング」への影響を示すことができました。

ここまでで

・日本語の「押韻」の歴史的変遷の整理
・欧米言語におけるライミングのサーベイ

以上2つのアプローチにより研究目的(日本語における「押韻」の歴史的な変遷・現状と,現代の 日本語ラップにおける「ライミング」のありかたを架橋すること)を達成することができました。第5章では、さらに、「ライミング」に対する一般的な実情を捉えるために基礎調査を行い、第6章ではここまでの結果を踏まえ、「押韻」と同義とされている「ライミング」の再定義を行いました。

 今まで文学で定着しなかった「押韻」と、日本語ラップで発達した「ライミング」を結びつけて体系的に論じられる研究はされてきませんでした。本研究は韻を踏む表現を獲得した「ライミング」について論じたもので、今後の日本語表現拡張の一助になると考えられます。
また、みなさんにとって馴染みのない「ライミング」というものを再定義することで、「ライミング」の鑑賞、制作を助ける客観的価値を共有することができたと考えられます。

 私の研究は参照している事例も多く検証の一つ一つをブログで紹介することは難しいのですが、2/12~15まで行われるネットワークデザインスタジオ卒業・修了制作展2016に可能な限り在駐するつもりですので興味のある方は話しかけてください。お話しましょう。
ご来場よろしくお願いします。




最後に私は2009年に首都大学東京のインダストリアルコースに入学し、今年大学院を卒業するので、大分長い期間在籍していたことになります。特にネットワークデザインスタジオにはお世話になり、

ナガサキ・アーカイブ
沖縄平和学習アーカイブ
START ON AIR!
アチェ津波アーカイブ
佐賀・肝炎マッピング

と多くの活動携わり、様々な経験を得ることが出来ました。
ネットワークデザインスタジオではインターネットの力で人を動かすこと、もっと根本的には人と人とのつながりで社会に影響を持てることを一貫して学ぶことができました。
卒業後は、インターネットのお仕事をすることになっています。ネットワークデザインスタジオの経験が活かされる職場だと思います。
今まで、真摯にご指導していただいた渡邉先生、プロジェクトを共にした仲間にこの場を借りて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

以上!したっっっっっっ!!!!!

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「ツバル・ビジュアライゼーション・プロジェクト」のコンテンツをアップデート

2009年に最初のバージョンを公開し,第13回文化庁メディア芸術祭で審査委員会推薦作品に選ばれた「ツバル・ビジュアライゼーション・プロジェクト」のコンテンツを更新しました.共同研究パートナーであるNPOツバル・オーバービューの遠藤秀一さんが撮影した,2012年のバイツプ環礁の写真があらたに掲載されています.
ツバル・ビジュアライゼーション・プロジェクトツバルに生きる一万人の人類 以下にスクリーンショットをご紹介.このプロジェクトも三年目に入りました.





現在,遠藤秀一さんと共同で,ポートレートの追加作業をすすめています.こちらも近日中に公開予定です.(wtnv)

東京大学大学院への移籍のお知らせ

2018年4月1日より,指導教員の渡邉英徳は東京大学大学院情報学環の教授に着任いたしました。首都大学東京の客員教授も兼務します。これに伴い,渡邉英徳研究室も東京大学大学院に移籍いたします。首都大学東京での研究は,今後も継承する予定です。これまでご支援いただいたみなさま,本当にありがとうございました。

教員プロフィール首都大学東京学生の業績一覧学生の週報ログ

バレーボールの練習改善のためのプレー記録の視覚化

こんにちは、学部4年の佐野千秋です。
私は卒業研究で「バレーボールの練習改善のためのプレー記録の視覚化」を行いました。



自身が高校生の頃、プレーのデータをとって選手で共有していたものの、見にくさや情報の少なさからあまりデータを重要だと思う場面がありませんでした。
せっかくデータを利用してるのならばより良いデータ利用方法があるのではないかと思いこの研究をはじめました。
実際に母校である神奈川県立厚木高校のバレーボール部に制作物を使ってもらったり、アンケートをとったりしながら、選手が感じている問題を元にデータ利用の改善を行いました。

主に行った改善は以下3点です。

1つ目はデータ収集内容の改善です。
今までは4つのプレー要素(※1)についてレシーブの精度(※2)のみを記入していましたが、スパイク、サーブはコースの記入欄を新たに加えました。
選手が求める情報を元に収集内容を改善を行い、情報量の充実を図りました。
この改善によって、どのようなコースが効果的なのかが分かるようになります。


※1 バレーボールは大きく分けてスパイク、サーブ、サーブレシーブ、スパイクレシーブの4つのプレー要素があります。
※2 バレーボールではレシーブの精度(=セッターの取りやすいボールかどうか)をA-Eの5段階に分けて表現することがよくあります。

2つ目はデータ入力方法の改善です。私の母校はデータを紙媒体に記録した後、Excelに入力し、印刷したものを選手内で共有していましたが、ある程度時間がかかるため練習試合があるたびに入力するのではなく何日か分をまとめて入力している場面が見受けられました。少しでも入力の煩わしさを軽減するため今までベタ打ちだったものを、Excelのマクロを使うことでクリック入力や、選択式で入力を行えるようにしました。



3つ目は視覚化方法の改善です。
改善の流れとしては、実際に母校の試合のデータを視覚化し、試合後のミーティングで使ってもらいアンケートをとります。その結果を視覚化方法の改善に活かすことで、より選手が見やすい、求めるものに近づけていきました。
視覚化改善は計3回行いました。左が1番最初となっています。
効果的な攻撃が出来ている割合を色、打数を円の大きさで表現するなど選手が直感的に度のコースが効果的なのかが分かるような視覚化方法を用いました。
またアンケートから選手に…

「記憶の解凍」国際平和映像祭2018にて学生部門賞を受賞

広島女学院高等学校2年生の庭田杏珠さんと,首都大学東京大学院2年の山浦徹也君が共同制作した映像作品「記憶の解凍:カラー化写真で時を刻み、息づきはじめるヒロシマ」が,9月22日にJICA横浜で開催された「国際平和映像祭(UFPFF)2018」の最終審査の結果,学生部門賞を受賞しました。受賞者は,ニューヨークの国際連合本部で11月に開催される「PLURAL+」の授賞セレモニーに招待され,作品上映とプレゼンテーションの機会を与えられます。


この作品は,2010年より渡邉英徳研究室と広島女学院高校が共同で取り組んできた「ヒロシマ・アーカイブ」の活動から派生したものです。昨年秋に首都大学東京で実施したワークショップにおいて,庭田さんたちは自動色付け技術を学び,それを活かした「カラー化写真をベースにした被爆証言の聞き取り」の営みをスタートしました。この活動を通して生まれたコンセプトが「記憶の解凍」です。


この映像作品では,現在は広島平和記念公園となっているかつての繁華街,旧・中島本町で暮らしていた濱井德三さんの記憶,そして生徒さんたちとの交歓,未来への希望が,スライドショーと音楽で表現されています。庭田さんが原作・脚本,山浦君が映像化を担当しています。ぜひ,ご覧いただければ幸いです。

「基礎ゼミナール」最終発表

全学一年生対象の講義「基礎ゼミナール」の最終発表会を7/8に行いました。



私は昨年の着任以来はじめて担当したのですが、いや実に楽しかった。こんなに楽しいのがわかっていたなら、昨年から担当したかったかも。お題は「近未来のインターネット環境におけるプロジェクト立案」でした。中間発表会の記事はこちら

幸か不幸か濃いメンツが多いクラスで、個性の強い案が出そろいました。一年生離れした構想力や一貫性、そしてプレゼン力を感じることもありました。このきらめきを喪わないまま学年を進んで欲しいものです。受講生の皆さん、アシスタントとして参加してくれた鈴木(真)さん、清水要くん(from 笠原研究室)、おつかれさまでした。全員、今後の糧にしていってください。(wtnv)

以下に全チームの発表資料を載せておきます。(まだ未提出のチーム分は随時載せます)Google Docsにコンバートした時点でレイアウトが若干崩れています。











広島テレビ新社屋「記憶の解凍」展覧会 開催

東京大学 大学院情報学環 渡邉英徳研究室は、広島テレビ放送と共同で、人工知能(AI)技術でカラー化した戦前・戦後の白黒写真をもとにして対話の場をつくりだし、被爆の記憶を継承することを目的として、

展覧会「記憶の解凍」 ~カラー化写真で時を刻み、息づきはじめるヒロシマ~

を開催いたします。
展覧会ウェブサイト展覧会チラシ 私たちはこれまでに、数百枚の白黒写真をAI技術でカラー化し、さらに、被爆者との対話を重ねて色を補正することによって、過去の記憶を辿る旅を続けてきました。最新技術と、被爆者・若者たちのコミュニケーションが組み合わさることで、これまで凍りついていた記憶が「解凍」され、よみがえります。

入場は無料です。みなさまのご来場をお待ちしております。

展示概要
会期:2018年11月23日(金・祝)~12月2日(日) ※10日間場所:広島テレビ新社屋エントランスロビー
広島市東区二葉の里3丁目5番4号
※広島駅北口徒歩3分時間:午前10時~午後5時 ※11月23日は午後1時開場。入場:無料展示チーム 主催:広島テレビ放送、東京大学大学院 渡邉英徳研究室原案:庭田杏珠(広島女学院高等学校)ビジュアルデザイン:秦那実会場デザイン:花岡大樹協賛:株式会社にしき堂、オタフクソース、広島ガス、広島管財、株式会社ロックサービス、アンデルセン、エネコム、中国電力、中電工、広島銀行、便利屋シンセー協力:広島女学院高等学校 生徒有志、ヒロシマ・フィールドワーク実行委員会、首都大学東京大学院ネットワークデザインスタジオ有志カラー化技術提供:早稲田大学 石川博研究室後援:広島県、広島県教育委員会、広島市、広島市教育委員会、公益財団法人広島平和文化センター、平和首長会議、公益財団法人広島観光コンベンションビューロー

渡邉研 × ほぼ日:「ほぼ日のアースボール」コンテンツを共同研究・開発のお知らせ

首都大学東京 渡邉英徳研究室は,株式会社ほぼ日と共同で,AR 地球儀「ほぼ日のアースボール」をベースとしたマッピングコンテンツの研究・開発を進めてきました。

共同研究では「ほぼ日のアースボール」と,渡邉研がこれまでに研究・開発してきたジオビジュアライゼーション技術を組み合わせることにより,地球そのもの・人類の文化についての知識と,新鮮なユーザ体験を提供するARコンテンツの実現を目指しています。

このたび,その研究成果を元にした3つのARコンテンツを、「ほぼ日のアースボール」アプリ上で,2018年1月以降、順次公開していくことをお知らせいたします。

■でこぼこ地球(本日公開)
「ほぼ日のアースボール」上に、実際の100倍程度に強調した地形を立体的に表現。詳細画面では、標高8,000m超の山々が連なるヒマラヤ山脈や、厚さ3,000mもの氷に覆われた南極大陸などについて説明しています。ユーザは多様な「でこぼこ」を体感し、地形について知ることができます。


■昼夜の移り変わり(2月下旬公開予定)
太陽光によって、地上の昼と夜がどのように移り変わっていくのかを、アニメーションで表現しています。ユーザは春分・秋分、そして夏至・冬至と4つのモードを切り替えながら、「白夜」が生まれるメカニズムなど、地軸の傾きによって光が当たる場所がどのように異なるのかについて知ることができます。

■学生たちの「手作り人工衛星」(3月下旬公開予定)
大学宇宙工学コンソーシアム(UNISEC)に加盟する、大学・高専学生が開発した人工衛星のデータを網羅。約1日のあいだに描く軌道を、100倍速で再現します。日本の学生たちによる「手作り人工衛星」が、アースボールの周りを元気よく飛び回ります。各衛星の詳細なデータも表示されます。


■本研究開発の担当者
渡邉英徳准教授高田百合奈(特任助教)田村賢哉(リサーチアシスタント・博士後期課程3年)山浦徹也(博士前期課程1年)福井裕晋(博士前期課程1年)渡邉康太(学部4年)

モノクロ写真のカラー化技術を用いたメディアと読者の対話を促すコンテンツ制作の研究

36歳,M2の與那覇里子です.  社会人学生として学んだ2年間の集大成を一部ですが,ご紹介します.
 タイトルは,「モノクロ写真のカラー化技術を用いたメディアと読者の対話を促すコンテンツ制作の研究」です.

なぜ,この研究をすることになったのか.
 ニュースの流通網は,新聞の戸別配達が大きな役割を担っている一方で,ネットの登場は,ニュース配信の仕組みを大きく変えました.  それぞれの持つメディアで情報を発信していたマスメディアは,Yahoo!やLINEに配信をはじめ,ユーザーがツイッターやフェイスブックなどのSNS,ブログなどにアップし,拡散されるようになりました.  地方紙で記者として携わる筆者としては,地方の情報を全国に直接届けられるようになり,チャンスが増えたと思う一方で,地域特有の文脈や情報が含まれているとなかなか読んでもらえないというジレンマを感じていました.  例えば,沖縄には,あの世の正月「グソーの正月」がありますが,見出しで取ったとしてもほとんど読まれません.  また,記事への書き込みは,ディスコミュニケーションが多くあるのが現状です.
 そこで,幅広い読者に沖縄のニュースへの理解を促すことを研究の目的にしました.
 そのために,次の3つのアプローチを取ります. 1)沖縄のニュースに興味・関心を持ってもらうコンテンツを制作 2)地元特有の文脈への理解促進 3)メディアと読者の前向きな対話を生み出す


どんな方法で目的を達成する?
 興味関心を引くために,飯塚らの開発したモノクロ写真をカラー化したAI技術を活用することにしました.

x  マスメディアは,読者に興味を持ってもらうため,イマーシブ型のリッチコンテンツを制作していますが,CG,凝ったUI,インフォグラフィックなどが盛り込まれ,記者がすぐに作れるものではありません.  飯塚らの技術であれば,1クリックで色をつけることができます.  エンジニアでない記者も扱うことが可能です.
 ただし,課題もあります.  AIは230万枚の写真から,着色について学んでいますが,正しい色ではないため,人の手による補正が必要です.  そのため,私の記者という職能を生かし,取材によって色を補う手法をとります.
コンテンツ制作
1)戦前の沖縄のモノクロ写真を活用
 写真については,朝日新聞が1935年に沖縄で撮影したモノクロ写真を使います.写真には,生き生きとした表情…

「記憶の解凍」 ARアプリ公開

東京大学大学院情報学環 渡邉英徳研究室は、AI技術を活用してカラー化した“戦前の広島”の白黒写真を、地図・AR(拡張現実)ビューに表示する「記憶の解凍」ARアプリを公開しました。

私たちのチームはこれまでに、数百枚の白黒写真をAI技術でカラー化し、さらに、被爆者との対話を重ねて色を補正することによって、過去の記憶を辿る旅を続けてきました。最新技術と、被爆者・若者たちのコミュニケーションが組み合わさることで、これまで凍りついていた記憶が「解凍」され、よみがえります。

カラー化された過去の写真は、私たちの心のなかに、これまでにない感情を喚起します。その写真が、アプリを通して、現在の広島の風景に重ね合わされるとき、私たちの眼の前には、切り撮られた過去の日々につながる、時の窓が開きます。


本アプリは、渡邉英徳教授とともに活動を進めてきた、広島市在住の庭田杏珠さんとのコラボレーションによって制作されたものです。

アプリダウンロード(無料):
App Store / Google Playにて、キーワード「記憶の解凍」で検索ウェブサイトからダウンロード制作チーム:
原案・カラー化・アプリ作成:渡邉英徳×庭田杏珠考証協力:濱井德三、ヒロシマ・フィールドワーク実行委員会写真提供:濱井德三、今中圭介、緒方昭三、片山曻、諏訪了我(浄寶寺)、高橋久、多田良子、本田美和子、広島県立文書館、広島市公文書館、アメリカ公文書館(撮影:尾木正己)タイトルロゴデザイン:秦那実カラー化技術提供:早稲田大学 石川博研究室平和記念公園(爆心地)街並み復元図提供:中国新聞社

「平成アーカイブ」:首都大,宮城大,慶應大,早稲田大による合同課題

「平成」が終わろうとしています。新しい元号は2018年夏に発表され,2019年より,新元号に載った歴史がはじまる予定です。みなさんが現在3年生だとしたら,大学を卒業する直前に,新しい元号に切り替わることになります。

「平成」は1989年1月8日からはじまりました。受講者のみなさんのこれまでの人生は,「平成」のタイムスパンにすっぽりと収まっています。「平成」のあいだに,17人の総理大臣が就任し,ベルリンの壁崩壊,バブル経済の崩壊,アメリカ同時多発テロ,湾岸戦争,世界金融危機,東日本大震災など,多くのできごとがありました。新元号に切り替わった瞬間に,こうしたできごとには「平成」というタグが付けられることになります。みなさんは,講師陣が「昭和生まれ」であるように,「平成生まれ」と呼ばれるようになるわけです。

さて,第二次世界大戦と太平洋戦争には「昭和」,関東大震災には「大正」,そして日露戦争には「明治」というタグがついています。しかし,これらのできごとは連続した時空間のなかで起きたものであり,歴史の深層において関連しています。過去のできごとは,みなさんが生きるこの瞬間と地続きであり,また,未来の世界にもつながっていきます。年号によるタグ付けは,こうした意識のなかのつながりを,ときに断ち切ることがあります。こうした断絶は,国境,人種の違いなどによってもたされるものと同質のものかもしれません。

メディアやプロダクトのデザイン,あるいはアートによって,こうした「断絶」を越え,過去と未来をつなぐ認識を生みだすことはできるか。トップに掲げた「AIによる自動色付け写真」や,渡邉英徳研究室で取り組んできたアーカイブズ・シリーズは,こうしたテーマに沿って制作されたものです。

今回の合同課題では,みなさんにも,このテーマに取り組んでもらいたいと思います。自由な発想にもとづく,新鮮な提案を期待しています。(渡邉英徳・石川初・中田千彦・物部寛太郎)

作品制作の指針

テーマは「平成アーカイブ」です。上記の課題文を踏まえ,朝日新聞フォトアーカイブの写真を活用して,メディア,プロダクト,アート作品を制作してください。作品制作には,以下のような対象に提案する想定で取り組んでください。
出版社,放送局・番組制作会社,広告代理店(クリエイティブ部門),インターネットサービス企業,デジタルサイネージ運営企業…