「ウクライナの農業被害」可視化コンテンツの制作



こんにちは、先端科学技術研究センター交流研究生(東京工業大学大学院修士課程1年)の指原佑佳(さしはらゆうか)です。このたび渡邉先生とともに、「ウクライナの農業被害の可視化」というテーマで、6月に起きたカフホカダム破壊事件に注目して衛星画像を用いた可視化を行いました。初心者の方でも簡単に再現できるようチュートリアルを用意しておりますので、ぜひ皆さんもお試しください。

日本語版:ウクライナの農業被害を見てみよう

英語版:You can do it too: Monitoring Agricultural Damage in Ukraine


制作背景

私は紛争による建物被害について研究しています。衛星画像を用いた分析を学び、かつ研究成果を広くわかりやすい形で社会に伝えたいと考え、渡邉研究室にお世話になっております。農学部時代の経験と合わせて、以下を制作しました。

今回のコンテンツには2点の目的があります:①ウクライナの農業被害を可視化する②初心者の方に衛星画像に触れてもらう

紛争地では、現地調査が困難なため、被害の把握が難しい状況にあります。特にウクライナは世界的な農業大国であり、長引く戦争による農業被害が懸念されます。2023年6月に起きたダム破壊事件により、洪水だけでなく、水不足による長期的な被害が予想されています。

このような場合には、衛星画像が情報把握に役立ちます。衛星画像はデータが大きかったり、高額なため、専門家でない方には敷居が高いと思われるかもしれません。そこで、今回はブラウザ上で簡単に操作できるツールと、誰でも無料で使えるオープンソースの衛星を使った例を紹介します。

コンテンツ紹介

今回、さまざまな指標を用いて、以下のことを示しています:

・用水路の水位低下により、圃場が水不足になっている

2022年の灌漑状況

2023年の灌漑状況

・植物活性度指標が例年比低下している

2023年の植生指標

・特定の圃場について、植えられている作物の推移を推定する

圃場ピクセルの分光スペクトル

今後の展望

ウクライナの戦争が長引くなか、農家の方の生活の様子を知るすべが少なくなっています。

衛星画像によって分かったことは、広大な農地が戦争の影響を受けていることです。一方で、地上の本当の様子は、現地の方に聞いてみないとわかりません。今後は、そうした方の声とつなげられればと思います。

また、ダム破壊による農地への被害は中長期的なものとされています。今後も、世界全体として注目できるようにコンテンツを作成できればと思います。