【修論】日中の文化交流促進のための個人ベース「ファンサブ」活動のアクションリサーチ ──日本女性向けシチュエーションボイス動画を主体として──




こんにちは。
修士2年の何蒙妮です。
この投稿では、私の修士論文の内容をご紹介します。





日中の文化交流促進のための個人ベース「ファンサブ」活動のアクションリサーチ ──日本女性向けシチュエーションボイス動画を主体として──


👉目的

本研究では、中国のユーザーに日本の動画の魅力を伝えることを目的とします。


👉手法

以下の手法をアクションリサーチをふまえて提案します。


①著作権処理:作者自身と連絡を取り、信頼関係を構築して転載許可を得る

②ファンサブスタイルの翻訳:特定のファンダム向けに適した翻訳スタイルを取る

③字幕デザインの指針:動画のテイストに合わせた字幕のデザイン・演出を施す



以上の手法に従って、ユーチューバー・四方木ふみが制作する「女性向けシチュエーションボイス」動画の翻訳・字幕付け、二次創作を行い、中国の動画配信サイトに転載します。


👉検証と結果

手法の有効性を評価するために、転載された動画に対するユーザーのコメントと弾幕を収集し、さらに15人のユーザーをランダムに選出し、半構造インタビューを実施します。

実践を経って収集されたユーザーの弾幕・コメント・インタビューの結果を分析したところ、以下の結果が得られました。

 1. 転載許可を得ることで、ユーザーは著作権保護への積極的な関与が促進され、ユーザーとクリエイター間の良好な関係が構築されました。
 2. ファンサブスタイルの翻訳を用いたことにより、ユーザーは動画の内容をより楽しむことができ、深く理解を得ることができました。
 3. 字幕デザインを通じて、ユーザーに没入感を与え、視聴体験を向上させました。
 4. クリエイターのフォロワー数・収益が増加し、グッズ販売が促進されるなど、予期せぬ成果も得られました。

これらの結果から、中国のユーザーに日本の動画の魅力を伝えるために、本研究で提案した手法は有効であることが示されました。これにより、本研究の目的は達成されたと考えます。


👉結論

本研究の成果は、サブカルチャーの発展と共有ルートの充実に寄与し、個人ファンサブ活動の支援につながると共に、多国間の文化交流を促進する一助となると考えます。





では、実際の個人ファンサブ活動において、実施された二つの手法を紹介したいと思います!

一つ目は、ファンサブスタイル翻訳です。本実践では合計12種類のファン翻訳形式を使用しました。一部を紹介します。


ファンサブスタイル翻訳の全構造


人物像に基づく適切の文体


ネットスラング



二つ目は、字幕デザインです。本実践では合計5種類の字幕デザインを行いました。一部を紹介します。


字幕デザインの全構造


タイピングアニメーション


メッセージウィンドウ・イラスト



👉修士研究から博士研究へ

本研究では、主に日本の動画の魅力を伝えるデザイン手法を探求し、著作権処理、ファンサブスタイルの翻訳、字幕デザインの方針などを提案してきました。しかし、ファンサブは異文化理解の促進に寄与するものの、その活動の持続性を保つためには、博士論文では、ファンサブ活動の継続可能な展開を支援するガイドラインを提案する予定です。

本実践をふまえて、今後は本研究で提案した手法を他の言語や文化圏のファンサブにも適用することで、さらに多くの国際的なユーザーに対して、さまざまな動画コンテンツの魅力を伝えることが可能であると考えます。これには、異なるジャンルや異なるタイプのコンテンツに対するファンサブの影響も詳細に調査する必要があるだろう。


👉謝辞

本研究の遂行にあたり、指導教官として多大なご指導をいただいた、東京大学大学院学際情報学府教授 渡邉英徳先生に深謝致します。また、同学科教授 筧康明先生、並びに同学科教授 田中東子先生には、本論文の作成にあたり、有益なご助言をいただきました。ここに深謝の意を表します。
研究について、日本語がうまく話せなかった私が本日まで研究を進めてきたのは、渡邉先生が丁寧にご指導してくださったおかげです。また、ファンサブ活動に協力していただいた個人ファンサブクリエイターたち、本当にありがとうございました、そしてEC2023学会でコメントやアドバイスをくださった先生の方や来場者の方にも感謝の意を表します。さらに、修士論文の日本語の修正を担当してくださった小平沙紀さんに心から感謝申し上げます。
最後に、渡邉研究室の皆様には、本論文の執筆にあたり多くのご助言、激励をいただきました。本当にありがとうございました。