こんにちは。修士2年の楊 欽です。
この投稿では、私の修士論文の内容をご紹介します。
SF プロトタイピングワークショップ手法の提案:
─生成AI との共同作業によるストーリーテリング支援─
修士論文の概要
◯背景と目的
SFプロトタイピングは、サイエンスフィクションの発想を基に、未実現のビジョンのプロトタイプを作成し、他者と未来像を議論・共有する思考法です。近年、公的機関や民間企業からの注目が高まっており、ワークショップ形式での実践事例も増加しています。大企業が主催する場合、小説家、漫画家、デザイナー、アーティストなどの専門家とのコラボレーションが特徴であり、一般的な民間環境での実施は困難が伴うと考えられます。主な障壁としては、小説家などの専門家が不在の場合、一般参加者が高度なストーリーテリング能力や、参加者同士の自由発想を妨げない批評力を持ち合わせていないことが挙げられます。こうした現状を踏まえて、本研究では小説家などのストーリーテリング専門家が不在の状況下でも、参加者が自身で効果的に進行できるSFプロトタイピングワークショップの手法を提案します。
◯手法
Step1. Discussion on Keywords
共有ツールで収集されたキーワードを用いて、また当ツールにより生成系AIに入力するためのプロンプトに自動的に変換し、最初の世界観の基盤となるストーリーを生成します。参加者はAIの出力結果に対して評価を行います。
Step2. The first worldbuild with AI
ストーリーテリング手法、ワークショップデザイン手法、またはその他の専門家的知見に基づくフレームワークに沿って、AIに対してストーリー修正のリクエストを繰り返します。さらに、各段階において、AIの出力結果に対して評価を行います。
Step3. Beat AI
ストーリーテリング手法、ワークショップデザイン手法、またはその他専門家的知見に基
づくフレームワークに沿って、AIに対してストーリー修正のリクエストを繰り返す。さら
に、各段階において、AIの出力結果に対して評価を行う。
Step4. Beyond AI
最終的には、AIによる最終出力を基に、批判的な議論を行います。
◯実践と結果
本手法を検証する実験を2つの実験群に分けており、段階を踏まえて提案手法を検証しました。
最初の実験群では、小学生、高校生、大学生、社会人など、複数の年齢層カテゴリーごとに5回のワークショップを実施し、提案手法のStep1とStep2の効果を確認しました。その結果、各参加者グループにおいて、最初のストーリーが形成されるまでの時間が大幅に短縮されたことが明らかになりました。予備実験との比較で、同等またはそれ以上に短い時間で、より多様なバリエーションが生み出されました。
2回目の実験群では、異なるバックグラウンドを持つ参加者を各グループに意図的に配置し、3回のワークショップを通じて提案手法の全手順を実施しました。その結果、異なる角度からのStep1とStep2の再検証や、Step3とStep4の有効性を確認できました。AIをターゲットとした批判的思考の導入により予備実験の中で確認された議論の停滞は避けることができ、さらに参加者はより自らの創造性に注意力を向けることになりました。一方で、AI出力結果への批判内容において創造的熟練者(編集者、アーティスト)向けのワークショップでは他のワークショップと異なるような行動変容を示したのは興味深い結果でした。