高校生と大学院生のコラボレーションにおける共創型デザインの有効性 −平和学習教材の制作とワークショップの実践−

こんにちは.修士2年の秦です.

2年ぶりの登場です.今回の投稿では修士研究について紹介します.


2年前の週報で,ヒロシマ・アーカイブARアプリとの併用を想定した平和学習ワークブックづくりについて紹介しています.この投稿のあと,大学院に進学した2年間で,引き続きワークブックづくりに取り組みました.



広島女学院高等学校署名実行委員会の生徒有志と共同制作として動いている「ヒロシマ・アーカイブ」制作プロジェクトの一環として,この平和学習教材づくりはスタートしています.
もともと高校生のみで制作していたワークブックですが,技術的な面や時間の制約などの課題から,高校生の思ったとおりに制作することができず,2016年秋から私を中心とした研究室メンバーで制作のサポートを行なっています.

私の学部4年次で制作した教材をパワーアップさせ,教材の想定ユーザである修学旅行生にとって親しみやすい平和学習教材にし,制作を進める中で広島女学院高校の生徒たちにも新しい学び・発見があるように,2017年秋ごろからは「共創型デザイン」という手法を用いて制作を行ないました.

この共創型デザインは,制作物のエンドユーザや課題の当事者がデザインの制作過程に積極的に参加する手法で,制作への参加者とデザイナーが互いを尊重しながら制作するなどの特徴があることから,制作ワークショップで教材づくりをしつつ,高校生が私たち大学院生からデザイン技術を学ぶことができるのではないかと考えて採用しました.

教材の制作自体は2年間で継続的に行ない,その中で,高校生と大学院生が顔を合わせて教材づくりに取り組むワークショップを3回実施しました.

①2017年11月,②2018年3月,③2018年6月の合計3回ワークショップを実施し,それぞれのワークショップで活発な議論ができるように,①シックス・ハット法,②希望点列挙法とNM法,③デザイン思考を活用しました.
毎回のワークショップで,高校生と大学院生の人数構成や活用したアイデア発想法について課題が出てくるため,その課題を克服できるよう,人数調整やプログラムの企画,活用するアイデア発想法の採用を行ないました.



この3回のワークショップを実施した結果,高校生から「考えたことをうまく発表できないときにサポートしてもらえてうれしかった」「ワークショップやフィールドワークを通して,修学旅行生が考えていることを想像できたと思う」といったコメントを得ることができ,また制作した平和学習教材についても,教材の魅力を高めるための指標であるARCS動機づけモデルによって評価することができたことから,この「ヒロシマ・アーカイブ」制作プロジェクトでの教材づくりにおいては,共創型デザインが有効であったのではないか,と考えています.

今後は,ワークショップに参加した高校生たちが,新しく教材づくりに参加する高校生に対しても同じようなワークショップを開催して教材をさらにパワーアップさせたり,その際の技術的なサポートとして大学院生が関わってくれることを期待しています.




さて,最後に,個人的なメッセージです.
この研究室に配属して3年が経とうとしています.特に2018年度は,私にとって試練の1年でした.研究に対する不安や様々な不満の多い1年でしたが,首都大チームの同期や後輩たちが日々支えてくれ,出張などの研究室のイベント事で会う東大メンバーの皆さまの応援があって,無事に修士研究を終えられそうです.
卒業された先輩方.在籍時には様々なアドバイスをくださったり,研究に取り組むかっこいい姿を見せてくださって,本当に憧れでした.先輩方が受け継いでこられた「ヒロシマ・アーカイブ」のプロジェクトがなければ,私は今ごろ修士研究を終えられていないと思います.本当に感謝申し上げます.

この研究室の活動に微力ながら貢献できたでしょうか.後輩たちに研究を通してかっこいい姿を見せることができていたでしょうか.
研究室生活を振り返ると,思い通りにいかないことが多く,後悔と心残りばかりです.
そんな私に対しても,ワークショップのサポートをしてくれたり,アドバイスをしてくれた学生メンバーには本当に感謝しています.ありがとうございました.
いまの首都大チームの後輩たちは頼もしく,皆やりたいこと研究したいことにしっかり向き合っていて,私から教えることなんて何もないと思いますが,伝えるなら1つ,後悔のない大学院生活を送ってください.
陰ながら応援しています.

首都大チームの後輩たちも,東大チームの皆さまも,お体にはお気をつけください.
皆さまのご活躍を心より願っております.