「問いかけ・しかけ」と「防災マップづくり」を取り入れた防災学習プログラムによる主体性向上


 
こんにちは!修士2年の福井裕晋です。

今回は、私の修士研究について紹介させていただけたらと思います。


私の修士研究は、防災学習時の学習者の主体性を向上させることを目的に、防災学習プログラムの開発を行いました。


近年、日本には私たちの想定を超える災害が増えてきています。そこでは、災害の状況に応じて、適切な判断・行動をしていくことが求められます。
しかし、学校教育の現場については、地震や火災などを想定した避難訓練は定期的に行われていますが、現状の避難訓練では災害時に求められる適切な判断・行動を育成することは難しいと私は考えます。

そこで、私は主体性を向上させることを目的とした関連研究を踏まえながら、「問いかけ・しかけ」と「防災マップづくり」を取り入れた防災学習プログラムの開発を行いました。

ここで、今回用いた手法について少し触れたいと思います。

「問いかけ」というのは、金井らの研究によると主体性を向上させる防災教育の実現のために,心の葛藤が生じる“心ゆさぶる発問”を行うことが重要だと述べています。

「しかけ」というのは、金井らの研究によると地域や家庭と協力・連携した授業づくりが求められると述べています。

「防災マップづくり」は、主に学校教育の現場や地域住民を対象に地域の防災設備などをまとめたマップを作りが行われています。この取り組みにより実際に地域を歩くことで、地域の課題を知る機会となり、それをマップにまとめていく過程のなかで、自分の考えを育むことができるのではないかと私は考えます。


そこで本研究では、「問いかけ」として生徒たちが心ゆさぶる問いかけを行い、「しかけ」として消防署員と協力・連携した授業づくりを行いました。また、プログラムのなかに「防災マップづくり」を取り入れることで、学習者の主体性を向上を行います。


今回、実践を行なった学校は兵庫県神戸市立伊川谷中学校の1年生211人です。伊川谷中学校では、過去2年当時中学校教諭であった井上先生(現 愛媛大学講師)と一緒に防災学習の開発・実践を行なってきました。今年は、中学校側から井上先生に防災学習の依頼があり、そこに私がサポートスタッフとして協力する形で、一緒に授業の開発・実践を行いました。


授業は、全8時間の授業を2ヵ月かけて行いました。実践にあたっては、ワークシートの製作をはじめ日程の調整など大変なところもありましたが、プログラムを進めていくなかで、生徒たちの防災意識が徐々に高まり意欲的に活動する姿を見ることができ、本当に実践することができて良かったなと感じました。


生徒たちが製作した防災マップは、消防署員に講評してもらえる機会を作ることができ、生徒たちや保護者に見てもらえるよう掲示をしてもらいました。今後は、学校内にとどめるのではなく、地域の連絡所やスーパーに掲示してもらうことで、より多くの人に生徒たちの取り組みが発信されていくのではないかと思います。

今回の防災学習は、長期にわたる学習となりましたが、生徒たちへのアンケート結果から、「来年もぜひ今回のような防災学習をやりたいです」、「今回の防災学習をとおして、自分たちが地域の人たちを助けれるようもっと学びたいです」など意欲的な回答をたくさんもらいました。学校という現場のなかでは、時間のカリキュラムの問題があり今回のような学習を実施することがなかなか難しい課題もありますが、継続的に行なっていくことで生徒たちの防災に対する意識や学びは向上していくのではないかなと思います。
授業の実施には、愛媛大学の井上先生をはじめ、伊川谷中学校の先生方、消防署の方々など多くの方々のご協力と支援があり、実現することができました。本当にありがとうございました。来年からは、学生ではなく社会人となってしまいますが、今回のような取り組みがどこかで出来るよう、自分なりに違う立場から貢献できたらと思っています。


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最後に、後輩の皆さんへメッセージを残したいと思います。


私は、研究生を含めて3年間在籍しました。外部からの学生であり、またデザインという分野からかけ離れたところからやってきましたが、この3年間は本当に充実した3年間となりました。

wtnv研は、同期をはじめ、先輩から後輩まで様々なスペシャリスト達の集まった研究室だなと感じます。また、ネットワーク研ということもあり、様々な分野の方々と一緒にイベントを行なう機会が多いです。私も自身の研究だけでなく、いろんな人の研究実践に同行するなかで、様々な人と触れ合い、色んなことを学びました。

ここで、自分のなかでですが3つほど大切にして欲しいことを書き留めたいと思います。
同期をはじめ、先輩・後輩を大切にする
外部から進学してきた自分には、同期の存在が本当に頼りになりました。デザインに右も左も分からない自分に、丁寧に説明をしてくれたり、一緒に研究室合宿の企画・運営をするなど、普段は仲良く、時には色々なことを言い合いながら行なってきました。困った時など、本当に同期の存在は大きく、自分の同期は自分の研究と重なるところも多く、実践や論文を書くうえで、一緒に相談しながら進めていくことができました。これは、本当に偶然なことなのですが、改めて恵まれていたなと感じます。
先輩や後輩も、普段から色んなことを教えてくれたり、遊びに誘ってもらったりと学ぶことも多く、アドバイスをもらえるなど困った時などに頼りになる存在です。日頃から、同期だけでなく先輩・後輩とも積極的に交流しておきましょう!


常に挑戦する姿勢をもつ
wtnv研のメンバーは、自分たちで何かを作ったり、企画したりなど常に挑戦する姿勢を持っている人が多いです。学生という時間があるなかで、今の現状に満足するのではなく、積極的に色んなことに挑戦してみることをオススメします!自分も、3年間中学校の先生と協力し、防災学習プログラムの開発・実践を行なってきました。1回で満足するところを反省点を生かし、色々な視点から行うことで、最終的に3回の防災学習プログラムの開発・実践を行なってきました。継続性が難しいなかで、3年間続けれてきたことは、自分にとっても大きな財産です。
wtnv研では、渡邉先生をはじめ、色んな人から「ここに作品を出してみたらいいんじゃないか?」など自分のやっていることを色んな人にみてもらい評価してもらう機会に積極的に応募しています。学校内に留まるのではなく、色んな人から評価してもらうことで、それが刺激となり向上心を養っていくと思います。実際にwtnv研では、先生が研究室メンバーの業績をまとめており、メディア取材・学会発表・資金調達など、メンバーが活発的に動いています。社会人になると色々な制約もあり、なかなか自分のやりたいことを自由にすることは難しくなります。学生の間に、色々なことに挑戦をしていくことで、自分の経験としても財産になりきっと今後の人生などに役立つはずです。

学生のうちに、海外に足を運んでみる
学生は、お金がなくなかなか海外に行くことが難しいですが、なんとか貯金して海外旅行にいったり、一緒に仕事を行なったりすることで、今までとは違う世界観が見えてくると思います。
日本は、世界のなかでも様々なものが便利で平和な国です。海外では毎日のように内戦が行われていたりする国など、様々な国があります。海外では、日本では当たり前になっていることが、ほとんど通用しないことが多いです。色んな地に足を運ぶことで、自分の中で当たり前だと思っていたことが変わることになると思います。
また、海外の仲間と何かを成し遂げることも大切です。自分は、防災のリーダーを育成する事業「HANDs!プロジェクト」に日本フェローの1人として参加してきました。アジア8ヵ国の仲間たちと一緒に、色々なことを話し合ったりしながら、子供たちが楽しんで学べる防災ゲームを作ったりしてきました。海外の人たちと一緒に話をしていくなかで、みんなそれぞれの考えや思いを知ることができました。また、一緒にゲームを作っていくなかで、マネジメントの仕方も国によって違ったりしました。アジアの仲間たちからみると、日本人はけっこう真面目な人が多いようです(笑)。自分たちのなかでは当たり前だと感じているやり方が通用せず、本当にそれで大丈夫なの?と思う時もあり、揉めたりすることもありました。自分は、この経験をとおして、日本人だけでなく外国人にも様々な考え方があることを改めて知り、色んな国の文化ややり方を知れたことはとても楽しかったです。日本だけでなく、海外の人たちも交流をすることも、とても楽しいことだと思います。


長くなりましたが、自分は本当にwtnv研に入って良かったと思っています。きっかけは、先輩の紹介でしたが、今まで学べなかった分野のことを知れたり、自分がやりたかったことを実現することができたり、今まで経験できなかったことを経験できるなど、楽しい大学院生活を送ることができました!

学生という立場ではwtnv研と卒業しますが、今後も同期をはじめ、先輩・後輩たちとも引き続き交流できたらと思っています。
皆さま、本当に3年間お世話になりました。ありがとうございました!