シリアスゲームを通したデジタル・アースアーカイブ作成による児童の地域理解促進

ご無沙汰しておりました。
首都大学東京大学院ネットワークデザインスタジオ修士2年 山浦徹也です。
この投稿では、自分の修士研究についてご報告します。

自分は児童の地域理解を促進するためにシリアスゲームを通してデジタルアース・アーカイブを作成する学習プログラムを開発しました。
 2017年からネットワークデザインスタジオおよび東京大学渡邉研究室では、山梨県南アルプス市と共同研究を進め、市民に向けて、市内の歴史・伝統文化をまとめたデジタルアース・アーカイブを開発・活用方法を検討してまいりました。
「○博アーカイブ」http://archives.maruhakualps.jp/
この共同研究を進める中で、児童を対象にしたデジタルアース・アーカイブの活用について検討し、総合的な学習の時間を用いて活用を進めることになりました。
そこで、自分は児童の学習意欲やモチベーションを高め、より深い学びを実現するためにシリアスゲームを用いてデジタルアース・アーカイブを作成するプログラムを開発することにします。
シリアスゲームとは、エンターテインメント性のみに特化せず「社会問題の解決」を目的に開発されるゲームのことです。近年では、地域社会を題材として現実世界を取り扱ったシリアスゲームが開発されており、モチベーションの喚起・継続、題材の地域に特化した学習体験を実現するといったメリットがあります。また、デジタルアース・アーカイブには、様々な情報をデジタル空間上にマッシュアップして表示することで、多角的で直感的な学習を実現し、記憶定着に効果的です。
シリアスゲームの先行事例、デジタルアース・アーカイブのもたらす学習効果について調べ、以下のような指針に基づいてゲームを開発して行くことにします。

  1. 主体的な学習態度と興味関心の創発
  2. 挑戦と達成感を伴う経験の積み重ね
  3. 時空間情報と紐づけて直感的な理解と記憶定着を促進

     今回は、南アルプス市立櫛形西小学校の6年生20人を対象にゲームを行います。
    この指針と対象地域である南アルプス市や児童の特徴、カリキュラムを踏まえてゲームを開発します。企画・実践にあたっては文化財課の保坂太一さんと6学年担当教諭の倉崎正行先生に協力していただきました。

    6年生の町歩きのカリキュラムとして設定されていた事前学習、現地学習、事後学習の全3回の授業時間にてゲームを実践し、デジタルアース・アーカイブを作成しました。
     まず、事前学習では地域の文化・歴史を題材としたクロスワードゲームを行ないました。
    資料を用いてグループで連携して解くクロスワードゲームは、地域の新しい発見や興味を引き出し、児童同士で支えあって、主体的に取り組む姿勢を生み出しました。
     次に、現地学習では、史跡やかつて存在した遺跡の写真をカメラに重ね合わせるARアプリを用いた撮影地探しゲームを行ないました。
    ARを通して実物の史跡見た後に史跡の解説を聞くという流れを通して、何気なく小さな史跡が児童の印象に残る結果となりました。
     最後に、事後学習として、児童らが国語の時間で作成した地域のパフレットのデータを入力し、デジタルアース・アーカイブを作成しました。
    作成にあたり、昨年の卒業生である井上らによって開発されたデジタルアーカイブ構築システムを用いてシステムを実装し、児童らに入力してもらいました。
    自発的に児童同士でサポートし合いながら入力を進め、歓声をあげながらアーカイブ作成を進めていきました。
    その後のアンケートでは、ほぼ全員が達成感・やりがいを感じていたという結果が得られたほか、地域について新しい視点を提供することができたという結果となりました。
     一連の実践の結果から、シリアスゲームを通してデジタルアース・アーカイブを作成することで、 学習意欲や地域に対する新たな興味を引き出せたと考えます。
    また、ARとデジタルアースを用いることで、児童らに時間的・空間的視点を提供して総合的な地域学習を実現できたと言えます。
     研究の実施にあたり、文化財課保坂太一さま、櫛形西小学校教諭倉崎正行先生、首都大学東京ネットワークデザインスタジオの学生有志など、様々な方に支えられました。心から御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
     今後は、この研究のような取り組みを学内で継続したり、他の市域で実践することで、アーカイブのさらなる内容充実をはかるとともに、このような活動がもっと盛り上がって行くことを期待します。自分な大学を卒業してしまいますが、違う形で貢献したいと思っております。


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     それでは、自分の学生生活を振り返り後輩たちに向けた言葉を…。

     研究室に所属してから3年間かなり自分の好きにやらせてもらった気がします。研究でこんな事したい、アプリを作ってみたい、何かのコンペに出す作品を作りたい…。このような願いの実現に際し、相談できる先輩・後輩・同期に本当に恵まれていたのがこの研究室だったように感じます。自分にはできないことでも、それを実現できる誰かが、必ず居ました。研究室メンバーの支えがあったからこそ、今の自分があるのだと思います。本当に感謝です。皆さんありがとうございました。

     そして、気付かされたのは、自分ひとりだけでは何もできないということ。限界は案外とすぐにやってくること。そんな時は、自分の「できること」と「できないこと」をはっきりさせた上で「できないこと」は誰かを頼りましょう。「できること」はさらに高めることも忘れずに…。技術・知識のシェアをしながら、お互いに切磋琢磨できる環境は貴重です。何もしないのは勿体無い。誰かと一緒に何かを生み出したときに、絶対に成長できます。

     繰り返しになりますが、まずは、自分のやりたいことをやりましょう(できれば誰かと手を取り合って)。その方がモチベーションも高まりますし、結果として大きく成長できると思います…。
    皆さんの更なる躍進と成長に期待しています。楽しんでナンボの学生生活です!
    それでは。