Nagasaki Archiveのスクリーンショット(写真:長崎原爆資料館所蔵)
本日より,Googleストリートビューで「原爆ドーム」が閲覧できるようになりました.また,平和記念公園もスペシャルコンテンツとして公開されています.以下は原爆ドームのストリートビュー.実際に操作可能です.
Google Japan Blog記事より:
今回の取組により、毎日、世界から数百万の利用があるストリートビューで、世界中のユーザーがいつでも、どこでも、原爆ドームの姿を見ることができるようになります。このストリートビューが、日本のみならず世界中の人々が少しでも広島について興味を持ち、原爆ドームさらには平和について考えるきっかけになればと考えています。ストリートビューによって「いまの街のすがた」が収録され,世界のどこからでも閲覧できるようになることは,それ自体に大きな意義があります.とはいえ,ストリートビューだけを眺めて,離れた場所のことをすべて知ることができるわけではありません.私たちはこれまでに,ツバル・ビジュアライゼーション・プロジェクト,アースダイバーマップBis,大島プロジェクト,そしてNagasaki Archiveなどのプロジェクト群を通して「ストリートビューには映らないもの」を収集し,デジタル地球儀に重層して発信してきました.
Tuvalu Visualization Projectのスクリーンショット(写真:(上)遠藤秀一(下)首都大学東京・渡邉英徳研究室)
例えば,この記事の冒頭に掲載した長崎・山王神社の「一本足の鳥居」は現存していますが,1945年当時の風景は誰にもみることができません.また,海面上昇で沈みつつあると言われているツバルの,日々刻々と変化しつつある島の風景は,今のところストリートビューには映っていません.アースダイバーマップBisでは「人々の無意識に訴えかけるもの」を,大島プロジェクトでは「島の人々にしかみえない風景」を,それぞれ可視化してきました.
場所にともなう時空間に蓄積された記憶,何よりも市井の人々の日常や語ることばは,現時点でのストリートビューやGoogle Earthには映らず,検索エンジンで辿ることもできません.こうした情報が機械的に収集され,インターネット越しに閲覧できるようになるのは,ソーシャルメディアが普及しつつあるとはいえ,まだ少し先のことでしょう.いま,それを実現するためには,先日の記事「デジタルアーカイブのコンセプト」で書いたように,既存のアーカイブを重層することに加え,人々の活動と記憶のコミュニティ形成を通して収集し,アーカイビングしていく以外の方法はありません.
Hiroshima Archiveでは,インタビューと既存のアーカイブのサーベイ,記録,アーカイブ化,そしてコミュニティ形成を,インターフェイスデザインの検討と同時進行で進めています.サーバサイドのプログラミングを必要とする部分以外,kmlを用いたコンテンツ制作などの技術面は,それほど難易度が高くありません.しかも年々簡単になっています.どちらかと言うと,人々との協働を含む社会な側面,また,ユーザにわかりやすく情報を伝えるインターフェイスデザインに心を砕いているのが現状です.
私たちの手法はアーカイブとともにメソッドとして公開し,世界中の人々が各々のテーマに沿った独自のアーカイブズを構築できる環境を提供していくつもりです. (wtnv)