「盛り上がり」の再定義−Web空間における「潜在性」−

こんばんは。修士2年の荒木です。
最後にこのネットワークデザインスタジオのブログに投稿したのは、学部生の時なので2年ぶりの投稿になります。
今回は、明日から2/16(月)まで行われるネットワークデザインスタジオの展示会「outdoor」にて、展示予定の私の研究の紹介をします。
ちなみ、開催初日の明日は18:00からレセプションパーティーを開催しますので、お時間のある方はぜひお越し下さい!!

学外展では作品ではなく論文の展示になるのですが、

研究タイトルは
「盛り上がり」の再定義 −Web空間における潜在性−
です。

本研究では、シチュエーションやコミュニケーション方法に限定されない「盛り上がり」の定義を行いました。


既に「盛り上がり」についてはさまざまな定義が存在しています。しかし、情報通信技術の発達に従い、これまでにない「盛り上がり」のシーンが将来生まれると予想されます。その際、既存研究の成果は実効性を失うおそれがあり、さまざまなシーンに対応するために、「盛り上がり」が発生するシチュエーションや、コミュニケーション方法にとらわれない定義が必要となる。また同時に、情報通信技術によって、非身体的に再現される感覚モダリティが増えていくと考えられるので、感覚モダリティの観点から新たに「盛り上がり」の潜在性を探る必要があると考えました。

以下の手順で潜在性を探ります。


そして、「盛り上がり」についてのアンケートを実施し、人がどのように「盛り上がり」を理解しているのかを明らかにした。さらに「盛り上がり」と各感覚モダリティの関連性を明らかにすることで「盛り上がり」の潜在性を探った。
本調査では、3つの設問から構成されたアンケートを行いました。

設問①日常生活の中で「場の盛り上がり」を感じた事象を記述。

設問②「明るい / 暗い」「不活発な / 活発な」といった18の形容詞対を提示し、「場の盛り上がり」を感じる事象のイメージとして相応しい印象を両極5段階スケールで評価。

設問③「場が盛り上がる揺れ」「場が盛り上がるバランスボール」のように「場が盛り上がる+名詞」という型で構成された短文の適切性を5段階尺度で評価。

設問① 回答事象数
設問② 因子分析後の結果
設問③ 評定値が中心値3を超えた項目

アンケート結果を分析したところ、以下のことが明らかになった。
人は他者と空間を共有する機会が多い事象に対し「盛り上がり」を感じる傾向がある。
また、事象を回答する設問であったが、11件の回答では盛り上がりを感じる際の条件があげられた。そのうち7件は「他者と~」という回答であった。そのことから「盛り上がり」というのは、個人によって創出されるのではなく、他者と空間を共有することにより創出される。つまり、「盛り上がり」というのは、個人の状態ではなく、空間や場の状態のことであると言える。
また「盛り上がり」の印象評価で得られた結果の因子分析(主因子法、プロマックス回転)を行ったところ、「盛り上がり」とは、「積極性」「快適性」「社交性」「変動性」によって構成されていることが明らかになった。

以上を踏まえて私は「盛り上がり」とは、
“複数人で共有する外部要因を含んだ空間において「積極性」「快適性」「社交性」「変動性」が高まった場の状態”
と定義しました。

また設問③の回答結果を分析したところ、「盛り上がり」は視覚、聴覚との関連性が強いという結果が示された。また設問①において、人は既に視覚、聴覚と関連性の強いと考えられる事象に対して「盛り上がり」を感じていることが分かった。そのことから、視覚、聴覚は潜在的にも顕在的にも、「盛り上がり」との関連性が強いと示された。一方、味覚、嗅覚との関連性が強いと考えられる事象の数は少なかったが、味覚、嗅覚も「盛り上がり」との関連性が強いことが分かった。

さらに本研究では、Web空間において「盛り上がり」を創出することを目的とした分析を行うために、定義に沿った5つの観点をあげました。その結果、5つの観点に従って日本において利用者数が多いSNSである、youtube、LINE、Facebookの現状分析を行うことが出来ました。
以上より、本研究の意義は、シチュエーションやコミュニケーション方法に限定されない「盛り上がり」の定義をしたこと、またである。それにより、現在では想定されないシーンにおいても有効性を示すことが出来、今後新たなコミュニケーション方法を創出する際に「盛り上がり」効果を付加させることが期待出来る。


最後に、後輩の皆さんへ           

これから配属される新4年生は、ネットワークデザインスタジオに配属になっても他の研究生との交流は続けてほしいと思います。特に、勉強の面で交流をしてほしいと思います。ネットワークデザインスタジオの方々は優秀な方も多いですが、その先輩達が持っていない技術や考え方を他のスタジオの方々は持っています。自分の研究室になじむことも大切ですが、外に目をむけることもしてみてください。きっといい刺激になると思います!

修士1.2年生は、研究というと固いですが、研究を楽しんでやってください。時には「やらなきゃ」と感じ、暗い気持ちで研究に取り組む時もあると思うのですが、研究テーマは自分自身が興味あることなので絶対に楽しめると思います。やり方はいろいろあると思いますが、研究を楽しめるやり方や考え方を見つけて、ぜひ作品制作から検証、論文執筆、最期まで楽しんで研究してください!

以上、2年ぶりの投稿でした!

荒木