週報20160505

Geoテクトレンドが詰まったFOSS4G NAカンファレンス

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博士後期課程2年の田村です。今回、FOSS4Gというカンファレンスに参加してきたので、はじめて週報を書きました。

5月2日〜5月5日にかけて、アメリカ合衆国ノースカロライナ州ローリーにてFOSS4G NA 2016が開催されました。FOSS4G NAは、”The Free Open Source Software for GeoSpatial”というオープンソースの地理情報技術に関するRegional Conferenceです。とくに北米は地理情報技術の最先端を走っており、FOSS4G NAはオープンソースな地理情報技術の最新トレンドを得られる場所です。今回は、その中で興味をもった発表を紹介します!

①ポストGoogle Earthの”Cesium”の盛り上がり

Cesiumとは、WebGL技術を用いたバーチャルなデジタル地球儀エンジンです。Cesiumは渡邉研究室のアーカイブシリーズに使われています。Cesiumは「渡邉研究室と言えば、Cesium!!」というくらい研究室にとってコアツールでかつ、渡邉研究室が日本のCesiumerの生産地になっています。このCesiumはGoogle Earth APIが昨年12月に廃止が発表されて以降、ポストGoogle Earthとして世界的に注目されてきました。

FOSS4G NAでのCesiumチームの力の入れようは凄いものでした。展示ブースにはゲーム台を展示し、他のブースを圧倒するほど力が入ってました。初日のDinner MeetupもCesiumが3Dをテーマに設けるほどで、新しい3Dコミュニティができそうなくらい盛り上がりがありました。


Kenya Tamuraさん(@kenyat1989)が投稿した動画 -

Cesiumに関する発表では、私が把握しているだけで8本ありました。とくに多かった話題は、Cesiumの「3DTiles」という3Dモデルに関してでした。「3DTiles」の発表の要点は、いかにオープンデータを用いて、Google Earthのような3Dモデルをつくるかです。2Dの地図データは網羅されてますが、3Dのデータはそれに比べてまだ網羅されていません。今後、「3DTiles」の技術開発も進み、3Dのデータも充実されていくと思います。Google Earth APIが廃止されたいま、Cesiumの3D表現の発展に期待です!!

②Webマップの技術的なホットスポットは"Vector Tiles"!!


私の守備範囲ではないのですが、Mapboxを中心とした"Vector Tiles"の話題は立ち見が発生するほどの盛り上がりでした。"Vector Tiles"の話はフロントエンドだけでなく、GeoServerの"Vector Tiles"対応などバックエンドの話もありました。

そもそも"Vector Tiles"とは何かというと、ESRIジャパンのサイトに(日本語で)詳しいことが書いてあります。

ベクター タイル レイヤーは、Web アクセスが可能なベクター タイルのセットとこれらのタイルの描画方法に対応するスタイルを参照します。ベクター タイルは画像タイルと似ていますが、データのベクター要素を保存する点が異なります。ベクター タイルをクライアント側で描画することで、ベクター タイル レイヤーをマップの目的に応じてカスタマイズでき、動的かつ対話的なカートグラフィが実現します。タイル アクセスのパフォーマンスとベクターの描画を組み合わせることで、タイルはどのような解像度のディスプレイにも適合します (解像度はデバイスによって違いがあります)。- ArcGIS Online ヘルプより -

 簡単に言うと、これからのデジタル地図はニョロニョロとより動的に動くようになるということです。FOSS4G NAで3本の"Vestor Tiles"に関する発表を聞きましたが、どれもわかりやすかったです。とくに、"Vector Tiles"についてざっと概要を掴みたい場合には、下にまとめている2つ目の"WTFGL: a beginner's guide to the future of open source web mapping"がオススメです。

Mapbox Vector Tile Specification 2.0
WTFGL: a beginner's guide to the future of open source web mappingスライド
Vector Tiles with GeoServer and OpenLayersスライド

③"GeoNode"をさらに強力にした"GeoSHAPE"

"GeoSHAPE"とは、地図データのCMSである"GeoNode"をベースとしたGISデータの管理・共有システムです。GeoNodeとの違いは、データバージョン管理機能("GeoGig")などのツールと連携しています。FOSS4G NA2016では、"GeoSHAPE: FOSS GIS Collaboration Platform with Web & Mobile Clients"というタイトルで発表がありました。



この発表はお目当のプレゼンのひとつでした。"GeoShape"は、"GeoShape"に実装されている"MapLoom"でWebブラウザから遠隔で情報編集できるだけでなく、"Arbiter"を使って現地調査で情報入力もでき、"GeoGig"によって編集の競合が起きても大丈夫でバージョン管理もできるという代物です。私は災害発生時にいち早く被災地の状況を把握するクラウドソーシングシステムとして、GeoShapeを実装するのが良いのではないかと考えていす。 
近々、GeoShapeを実装できるようになることを目標にしてます。

④GISデータのGitバージョン管理ツール"GeoGig"の台頭


"GeoShape"にも使われている"GeoGig"ですが、こちらは一昨年からウォッチしていたサービスです。"GeoGig"とは、地理空間情報版Gitのようなもので、地理情報に関わるデータのバージョン管理ができます。バージョン0.9のベータ版まで"GeoGit"という名前でしたが、昨年の7月ごろにver1.0がリリースされ、"GeoGig"という名前になりました。この"GeoGig"に関して、昨年開催されたFOSS4G Seoulではそこまで盛り上がっていなかったところ、FOSS4G NAでいよいよ表舞台にでてきました。FOSS4G NAでは、QGISとの連携ワークショップも開かれました。
その背景には、"GeoGig"と連携するツールがでてきており、ようやく実用になってきたのかなと思います。

⑤Droneの処理もコマンドひとつで"OpenDroneMap"

誰でも簡単にDroneで空撮できる時代が来ました。地理・測量屋にとっては自分で撮影した空撮画像を処理して、GISデータとして使いたいところです。しかし、Droneの処理は難しい・処理重い・ソフトが高価という誰でも簡単に手をだせるものではありません。そういう状況の中で、オープンソースとして空撮画像を処理するソフトウェア  "OpenDroneMap"の開発が進められています。


FOSS4G NAでは、"Open the classroom window for... DRONES!"という発表にて、各ソフトウェアでの処理比較をおこなった事例が紹介されました。"OpenDroneMap"の特徴は、'python run.py'というコマンドひとつで、オルソ化空撮画像、ポイントクラウド、3Dサーフェスモデルなどを各データ形式を自動で出力してくれるところです。ただ、スペックの高いPCを用意しないといけない点や、処理結果の画像にムラができるなど開発の余地がまだまだあります。

それでも今後の開発に期待です!日本語でOpenDroneMapインストールの資料をQiita!に投稿してます。興味のある人はそちらも参照してみてください。

最後に


最後に、渡邉先生も"Hiroshima Archive and disaster digital archives series”というタイトルで、アーカイブシリーズを紹介しました。ハフィントン・ポストの記事にもまとめてあります。渡邉研究室のアーカイブは Cesiumというオープンソースのデジタル地球儀アプリケーションが使われてます。Cesiumの開発は、Google Earth APIがなくなったいま、Google Earth APIに変わる強力なWeb地球儀としてオープンな界隈で進められています。Google Earth APIに変わるツールに関する話題は、FOSS4G Seoulの時より関心が高いものでした。そうした背景の中、渡邉先生の発表は、Google Earthから移行したコンテンツとして最も精巧につくられており、その表現力はGoogle Earthを超えているとも言え、多くの聴衆に” Amazing!!”と言わせる内容でした。
いつかFOSS4Gの国際カンファレンスで同じように"Amazing!!"と観衆に言わせる発表ができるようになりたいと思います。この4日間は、とにかく新しい刺激の連続でした。
FOOS4G NAの次は先生のいるハーバード大学に移動します!!