ふるさと納税制度を用いた着地型観光のモデルの研究-東京都大島町におけるケーススタディ-

こんにちは。
首都大学東京大学院修士2年の福山です。
今回の投稿では私の修士研究について紹介させていただきます。


私は,「地域の人との交流を産む観光モデルについて検討する」ということを目的とし,修士研究を行ないました。


近年,観光者が行なう観光形態は,自分の趣味嗜好を重視できる”着地型”の観光に変わって来ています。
その中で観光を通したまちづくりなどの側面を持っている「着地型観光」について着目しました。

着地型観光とは,「地域住民が主体となって観光資源を発掘,プログラム化し,旅行商品としてマーケットへ発信・集客をおこなう観光事業への一連の取り組み」として定義されています。これは観光を開発する主体が企業から地域へと変わってきたことを指しています。
しかしこれには,”発地型”の観光では,売り手・買い手として捉えられていたものが,”着地型”の観光としては,ホスト・ゲストへと取引の主体が変わっただけであるとの指摘があります。






また,山村は次世代ツーリズムが向かう行く先として「新たな文化創造につながる感性的ネットワーク(架け橋)構築の一形態としての観光」を目指すべきだと示しています。
「コト」を消費することを共有することにより,「観光」を通して,単なるホスト・ゲストの枠組みを超える,観光者と受け入れ側の多様な関係が求められていると考えました。


本研究では観光を,共有すべき価値を見出すための「観光」と位置付けました。
共有すべき価値として,本研究では観光を通して地域の受け入れ側と観光者の対等なコミュニティを築き上げることを目指し、そのためには,観光を通した「交流」が必要であると考えました。


このことから,前述した「地域の人との交流を産む観光モデルについて検討する」という目的を設定いたしました。

またそのためには,「文献調査と現地調査の結果を元に,ふるさと納税制度を用いた着地型観光のモデルを提案する」ことと設定しました。

ふるさと納税制度には,返礼品を巡る課題があり今回の研究において着地型観光ととても親和性が高いと考え,このように設定しました。



その後に本研究の対象を,ふるさと納税制度に関心が高い主婦層が含まれている核家族と設定しました。また,モデルの要件として以下の受け入れ側のガイドラインを定めることにしました。

  1. 地域資源を生かした観光資源の抽出
  2. 対象家族に対して事前ヒアリングの実施
  3. 2)をもとに複数個のフレキシブルな観光プランの作成
  4. 交流を志向しつつ,観光者と同行しながら観光案内
  5. リアルタイムの要望に可能な限り応え,旅程を変えつつ実施

これを踏まえ実践のモデルツアーとして,東京都大島町を対象地域として観光プランを企画しました。12月に研究室所属の大井さん一家協力の元,一泊二日の観光プランとして行なうことができました。






当日は,現地のガイドとして同行し交流をしながら観光案内をしました。家族の方々にはとても伊豆大島を楽しんでいらっしゃる様子が見え,また,ガイドとの関係が構築しつつある様子が見られました。

また実践後のヒアリングにより,「ガイドとの交流も楽しむことができ良い思い出になった」など,想定よりも高い評価を得ることができたと考えました。これは,ガイドがいることによるメリットが働いたことや,親と子の両方の立場から満足できたこと,ストレス無く観光できたことが考えられます。



今回の研究では,提案する交流志向の観光モデルによって,地域とのコミュニケーションの促進や地縁を超えたネットワークを形成し得たことであると考えます。このことにより,提案するモデルは,観光者により良い観光体験を提供しながら,地元主体の観光モデルを確立するための一助となりえるものだと考えています。



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自分は,渡邉先生が首都大にいる時から3年間渡邉研に在籍させていただきました。
東大に研究室を移しても,変わらずゼミにて研究を進めることができ,最後の首都大生として修士研究を終えることができたのは,渡邉先生のお陰であると感じています。
本当にお世話になりました,そしてありがとうございました!!!

また,日頃から議論ができ,未熟な私に良きアドバイスをいただいた渡邉研の先輩のみなさまには感謝しきれません。本当にありがとうございました!



これから社会人になりますが,今までの経験を生かして様々なことにチャレンジしていきたいと思います。
3年間お世話になりました!