学習指導要領LODの公開

 「学習指導要領LOD」の公開

 

こんにちは。

東京大学 大学院 学際情報学府 文化・人間情報学コースの大井将生と申します。

 

この度、「学習指導要領LOD」を公開させていただきましたことを報告させていただきます。

 

  • [学習指導要領LOD]

   https://w3id.org/jp-cos/ 

 

  • [メンバー]

高久雅生*1, 大井将生, 榎本聡*2, 江草由佳*3, 有山裕美子*4, 阿児雄之*5.

*1)筑波大学, *2)日本女子大学, *3)国立教育政策研究所, *4)軽井沢風越学園, *5)東京国立博物館 

 

  • [概要]

 文部科学省が公開している学習指導要領と教育要領の内容・コードおよび関連する情報をLOD(Linkked Open Data)化しました。LOD化の対象は、現在公開されている全ての学校種別の新旧学習指導要領と教育要領(一部改正を含む)コード表の最新版です。

 文部科学省は、多様なデジタルコンテンツと学校教育とを接続し、学習系データを横断的・体系的に活用するためのオープンデータとして、2020年に「学習指導要領コード」を公開しました。しかしながら、細目にコードを付したExcel形式であるために仕様書をよく読まないと構造や意味が読み取りづらいという課題や、より広い活用を促進するために必要なURIが付されていないために多様なweb上のデータやコンテンツとの接続及び活用が難しいという問題がありました。

 そこでこの課題を解決するために、指導要領及びコードにURIを付与し、それを参照した際にRDF(Resource Description Framework)やSPARQLのような機械可読性の高い標準技術を用いて情報提供が可能なデータセットとして「学習指導要領LOD」が必要であると考えました。

 構築に際しては図書館情報学、教育工学、博物館学、デジタルアーカイブ学、教育実践などの分野を横断し、理論と実践を架橋する研究プロジェクトを立ち上げ、定期的なオントロジーの検討を重ねました。

 「学習指導要領LOD」は、細目コードおよびその他の関連情報のURIを永続的な識別子として用いることを意図し、コード表と関連する情報全体の整合性を確認しながら構築しました。また、構築の過程で判明したコード表内のエラーなどは文部科学省にフィードバックを行いながら、LODの提供を行いました。

 LODデータは、元のコード表と同一ライセンスのもと、構造化されたRDF/Turtle形式で公開するとともに、解決可能なウェブデータとしても提供しています。

 

  • [展望]

 今後は、構築した「学習指導要領LOD」をハブとして、「教科書LOD」や「多様な資料を活用した教材アーカイブ」、「ジャパンサーチ」をはじめとするデジタルアーカイブ及びそのメタデータ群、デジタル教科書や電子書籍などとの連携を進める予定です。とりわけ「多様な資料を活用した教材アーカイブ」では、全国の小・中・高の先生とMLA(博物館・図書館・文書館など)の関係者が多様な資料を活用して協創的に制作された教材に既に指導要領コードが付与されているため、一次資料のメタデータと学校教育とを指導要領LODを媒介にして接続するモデルケースになると想定しています。

 こうした実践により、学校教育と多様なデータやコンテンツとの接続を具体的かつ広域に進められるようになると共に、これまで分断されていた異なるコミュニティの知識体系を接続・統合することに貢献できるのではないかと考えています。

 このように貴重な文化資源や多様な資料のリンク&フロー化を進めることで、子どもたちの学びがより深く、豊かなものになるよう、研究と修養に努めます。





  • [参考]

  「文部科学省 学習指導要領コードのコード表(全体版)について」   

  https://www.mext.go.jp/a_menu/other/data_00002.htm