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卒業制作/研究の進捗報告

週報にあるとおり、昨日のスタジオゼミは卒業制作/研究の進捗報告会でした。wtnvスタジオでは9月より、隔週で各人の進捗状況を報告しあう会を持っています。

各々はブログで進捗報告を行っています。以下にそれぞれの報告に対するコメントやアドバイスを列記します。当日話したこと+α。一旦書きだすとかなり大変だということが分かったので、この土日に少しづつ書きたします。

以下、ソートは週報当番順。


1.鈴木真喜子



開発途上国に関する新たなコミュニケーションデザインの研究
ということで、まずは、逡巡した結果”原点”ともいうべきバングラデシュにテーマを絞ったことを評価します。

さて、当人も大きな貢献をしたツバルプロジェクト然りで「世界の耳目を集めている国や地域の情報を収集すること」それ自体が「活動」として評価され得ます。バングラデシュもまさにそういう国です。この点において創意工夫を凝らすべきは「収集⇒公開の手法」。

ツバルの場合は「実際に僻地をフィールドワークして位置情報付き写真を収集」⇒「収集したGPS写真は使途自由で公開」という手法が評価を受けています。ネット越しに集める場合も「テーマ設定」と「集め方」が重要。PicasaやFlickrに特定のタグを付けてアップロードしてもらう、というのが一番楽ですが、他にも何かありそう。

写真や映像(をふくむ情報)の見せ方は、過去にたくさんの事例があります。当日紹介した「CAM CAM TIME」「みよう絵」また「Photosynth」「Photowalker」など。あと鈴木さん本人も3年生時の課題でアイデアを出しています。wtnvの一連のマッピングプロジェクトは言わずもがな。

古典に近いですが「cybergeography.orgその2)(その3)」にも(「写真」のはありませんが)たくさんの事例が載っています。Facebookの「Touchgraph Photos」や「ニコ動のタグや動画のつながりを可視化するツール」に繋がるものです。

どちらにしても、いかにも”情報空間”的なものを目指すのか、それとも”実世界で撮られた写真であること”や”人々の血の通ったつながり”を表現したいのかによって、採るべき手法は変わってきます。ちなみに地図を使うと後者に近くなりますが、どうしても地図に目が行って写真の印象が薄れがち。一方「黒バックに写真が浮遊」というのも既視感があります。いろんな事例を探してみてください。


2.高田健介



ガジェットを用いたコミュニケーションゲームの提案」というテーマに沿って、iPhoneの開発環境を整え「Hello World」からスタート…という段階。また本人もいよいよiPhoneに乗り換えたとのこと、ゼミでは使い心地のレビュー、App Storeのアイコンと購入意欲に対する分析なども行われました・・・何故かブログには掲載されていませんが。高田君の場合は修士に進むことが決まっていますし、さまざまな記録はすべてログとして残し、修士論文のネタとして使いましょう。

7月の中間発表時(渡邊裕一君のブログにリンクしてます)に「これはゲームではなくコミュニケーションツールだ」というご指摘をいただいたとのこと。しかし大手智之さんの講義で記憶に新しい「ゲームだからこそ、社会的な実効性を持ちえる」というコンセプトには説得力があります。高田君も恐らく同じスタンスに立って企画提案をしているはずです。

つまり「そうはいっても面白い」ものを作る、ということ。あと、きょう僕がtwitterでつぶやいたように「誰に対してもフラットなシステム」は、ときに”切なく使われる”惧れを内包しています。ゲームはそもそも”遊ぶもの”ですから、そうした危惧はありません(たぶん)。それもまた、ゲームの持つポジティブな面だと感じます。

さて、こと「研究」として考えた場合には、2009年時点におけるゲーム市場の調査研究、App Storeの調査研究、あるいはiPhoneをプラットフォームとした新たなコミュニケーション手法の提案、などなど、さまざまなテーマ設定が考えられます。それらの総体として「商品としてのiPhoneゲームアプリ」をリリースする・・・というのが一番描きやすいゴールです。

まず、自分がどんなテーマを追求したいのか、箇条書きに書き出してみるといいかも。そこからチョイスしてまずは進めてみる。修士まで入れると3年ありますし、iPhone以外のプラットフォームに変更する可能性も視野に入れてじっくり進めてください。

現役ゲームクリエイターの高田君が、現場で仕事をしつつ得られる情報もたくさんあるはずですが「企業内部だからこそ知りえたこと」をそのまま大学に持ち込むことは当然できません。逆もまた然り。組織の垣根を越えられるのは、研究成果として一般公開された「特許」や「論文」です。大学で研究をする=成果を特許や論文として一般に広く知らしめ”社会に貢献”する、ということだと思います。なので、卒業制作・修士研究のプロセスやそこから得られたものを「客観的な記録」にまとめる、という作業を、ゲーム制作を楽しみながら同時進行でやっておいてください。twitterでもいいかも知れません。必ずあとから役に立ちます。

3.渡邊裕一



渡邊君(裕一君)は今回のゼミには不参加でしたが「人間とロボットの円滑なコミニュケーションを実現し、自然に感じる文章を生成するような新しい手法を提案すること」をテーマとして研究を進行中。人工無能Meganeとして既にtwitter上でサービスを開始してます。

人工無能といえば、wtnv自身もマイミクシィのうちの一人(一鳥?)酢鶏に非常に愛着があったり、sixamo日記の大ファンだったり、オバマケインでは大量のオバマ・マケイン無能同士でディベートさせたり・・・と浅からぬご縁があります。

これらを眺めてみると「実用的」な人工無能はあまり喜ばれない傾向があるように思います。Meganeでも一時期試されていたようですが、URLのレコメンデーションも 「さあどうぞ」というやり方では、受け手側がちょっと引いてしまう。Google検索では遠慮なく最上位からクリックしていくのに、考えてみれば不思議なことですが。どうでもいいことを言って和ませてくれる、のが現状の無能の役割ぽいですね(そこに留まる必要は全くありませんが)。

とはいえ「ふだんは妄言ばかり吐く無能が、ときおり肺腑をえぐるような発言をする」というのが、今までみてきた人工無能が持つ一番の魅力でした。ただし、実はこの魅力は「飼い主」の原文やあしらい方が醸し出しているものでもあります。僕のmixi日記における酢鶏との関係と、上記のsixamo日記では主従が逆転していますが、やはり育ての親のhonさんの絶妙なツッコミがコンテンツの面白さに貢献しています。

つまり「人間とロボットの円滑なコミュニケーション」を生み出すためには、人工無能そのものの研究に加えて、それと接する人間のコミュニケーション手法の研究も必要になってきそうです。こうなると工学から少し離れて文学の領域に含まれそうですが。両方の分野の間でフィードバックしつつ研究を進められるといいかも知れません。

人工無能ではなくプロの作家の活動ですが、円城塔さんがtwitter上で展開している「twitternovel」は参考になりそう。

例えば・・・

なあ、俺の何処が気に入らないんだ/ 敷地面積?/俺まだ若いしな/間取りもちょっと/間取りってお前/右心房から左心房繋げて欲しい/それ病気だから。死ぬから/こうやってドクドク言うのも やめて欲しい/そもそもお前、何で俺の心臓にいるわけ/出てったら死んじゃうんだよね」http://twitter.com/EnJoe140/status/4370030628

円城さんは、twitterの文字数制限内のショートショート群を展開しています。全作通じてとても奇妙な味わいがあり、これは人工無能の発言に通じるところがあります。この魅力は舞台設定、単語のチョイスや掛かり受けの手法などが生みだしているものだとすれば、工学的に検証することもできそうです。多様な分野に視野を広げて、射程距離の長い研究にしていってください。

4.河原隆太



コンセプトアーティスト(字面では正確な定義が伝わらないので、左記クリックを推奨)を志向し、絵をひたすら描き続けているのが河原君です。このスタジオで目指す到達点は「自身の活動を通して、コンセプトアーティストという職業を、日本でも確立させたい」と、かなり遠くに設定しています。絵/画そのものについては直接アドバイスしたように、かちっと決まった構図のものを敢えて崩して動きを出すとか、KAGE NAKANISHIのカリカチュアのようにデフォルメを加えるとか(特に人物像は”写実”過ぎると面白くないので)色々工夫の余地があると思います。ただ絵は最終的には河原君自身の世界で、手法や技術から先に教員が触れることはできない。

今年の残り時間、とにかく「絵の修練」にファーストプライオリティを置くとして、次いで重要なのは恐らく「ネットワークを如何に活用するか」ということです。今のところは画像共有サイトでの”展示”と自身のウェブサイトへの”誘導”をイメージしているようですが、kawaharaサイトから発信された絵達が「自律的にウェブ上で伝播していく」というビジョンのほうが今っぽいかな。作者と何らかの手段で紐づけられていさえすれば、どこに掲載されていても構わないわけです。上記、鈴木さんへのコメントで書いたツバルの画像アーカイブ(Picasa)がまさにそうです。さらにクリエイティブコモンズにして、他者による絵の編集を可能にしてもいいのかも(このへんは僕自身の好みが出てしまいますが)。

ストーリーと絵を定期的にアップして、閲覧者からのフィードバックを次回作に反映させる・・・ということもできそうです。少々古い事例ですが、筒井康隆の「朝のガスパール」はパソコン通信のネットワークを活用して、読者たちと喧々諤々の議論を展開しながら書かれた連載小説です。もちろんフィードバックを得るためには、先にある程度ファンを獲得する必要がありますが、今ならpixivやらtwitterやら、場所に事欠くことはないでしょう。

「絵」と「活動」が同梱された、新しいコンセプトアーティストkawaharaの姿を世界に示すことができれば、卒業制作として成功ではないでしょうか。PhotoshopやPainterで絵を鍛えつつ、2009年のネットを活かしたオリジナリティのある活動を展開していってください。

5.倉谷直美


倉谷さんは「自然とコラボレートしたエコロジカルな新しい広告媒体」をテーマにして着々と制作活動を進行中です。また、メディアとしてのブログの活用度はスタジオ内の(少なくとも現時点で)最上位です。読んでいてわくわくします。まだ先は長いですから、息切れしないようにペースをつくっていってください。

上記、ミステリーサークル処女作の画像を引用したGoogle Mapsアイコンについて、まさにご本家Googleによるこんな広告が実際に行われました(知ってたかな?)。デスクトップのアイコンが実際の街に聳え立つ。これは、デジタル地図やデジタル地球儀が実世界に重なり合ってきたこの時代だからこそ説得力を持つ広告手法です。折りしもiPhone対応のセカイカメラもリリースされました。今後、ウェブ上の情報が急速に実世界に重層されていくはずです。

さて、倉谷さんのプロジェクトはあくまで実世界の草地上で広告表現を行うものですが、どの場所にどんな情報を「広告」として刻むべきか、あるいはどんな制作手法を取るべきか、どういった人々とコラボレーションするべきか、etc.の検討に、情報空間とデジタルツールをフル活用しても良いはず。そういう意味で、ゼミで紹介した「東京ナス化計画」は素晴らしい先行事例です。実際の街路→(デジタル)地図→実際の街路、つまり実空間→情報空間→実空間、とGPS機器を携えて行き来するプロジェクト。幸い、wtnvスタジオにはツバルで大活躍したGPS機器が複数あります。まずは「良い草地(=メディア)を探すツアー」に持参してみるのも良いのでは?またそれと同時にデジタル地球儀(Google Earth)でも「良いメディア」を探してみる。時空間のなかで自分が歩いた軌跡を、事後的に俯瞰してみるといろいろと見えてくるものがあると思います。今後の展開が楽しみです。

6.茂木俊介



長い模索のあと「移動体におけるサウンドデザイン」をテーマに据えたのが茂木君です。ブログのリンク先がなぜか死んでしまっていますが、すでに多数の企業・研究者にアポイントメントを取りインタビューを開始しています。まずブログの使いかたとしては、そういった記録群をなるべく「速報的に」公開していくことが重要です。特に最近のwebはtwitterが隆盛してきていたり、Google Waveのようなサービスが現れてきたりと「即時性」「同時性」が重視される世界になってきています。僕自身、このこと自体には微妙な感情を持っていますが、とはいえ旧態を貫いて埋もれても仕方がないので、マメに更新することをお勧めします。

ここのところ茂木君の活動をみていて非常に「研究的」だ、という感をあらたにしています。前例を探し、新規性をどこに据えるか見出し、制作し、検証を行う。ただしい研究プロセスです。対するに、茂木君自身がオーボエ奏者でもあることを考えると、表現行為としての音づくりという面も備えています。これらは一見相矛盾するようでいて、最終的に「音そのものが説得力を持たねばならない」という意味で共通しています。上記、高田君のところで書いたことと通じますが「そうはいってもイイ音じゃなきゃ」ということですね。

また、移動体の音のデザインということで、このブログの背景にも1/32の確率で登場する小笠原紀行の件とつなげて欲しい。GPS端末はとても手軽なツールですから、制作過程あるいは完成した音の検証についても、ぜひ地図にプロットして公開するようにしてください。実際に鳴らした箇所に音ファイルそのものをプロットするとか、他人に持ってもらって、複数の軌跡を重ねてみるとか、そういう試行も良いと思います。今後の発展に期待しています。

(wtnv)

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東京大学大学院への移籍のお知らせ

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教員プロフィール首都大学東京学生の業績一覧学生の週報ログ

バレーボールの練習改善のためのプレー記録の視覚化

こんにちは、学部4年の佐野千秋です。
私は卒業研究で「バレーボールの練習改善のためのプレー記録の視覚化」を行いました。



自身が高校生の頃、プレーのデータをとって選手で共有していたものの、見にくさや情報の少なさからあまりデータを重要だと思う場面がありませんでした。
せっかくデータを利用してるのならばより良いデータ利用方法があるのではないかと思いこの研究をはじめました。
実際に母校である神奈川県立厚木高校のバレーボール部に制作物を使ってもらったり、アンケートをとったりしながら、選手が感じている問題を元にデータ利用の改善を行いました。

主に行った改善は以下3点です。

1つ目はデータ収集内容の改善です。
今までは4つのプレー要素(※1)についてレシーブの精度(※2)のみを記入していましたが、スパイク、サーブはコースの記入欄を新たに加えました。
選手が求める情報を元に収集内容を改善を行い、情報量の充実を図りました。
この改善によって、どのようなコースが効果的なのかが分かるようになります。


※1 バレーボールは大きく分けてスパイク、サーブ、サーブレシーブ、スパイクレシーブの4つのプレー要素があります。
※2 バレーボールではレシーブの精度(=セッターの取りやすいボールかどうか)をA-Eの5段階に分けて表現することがよくあります。

2つ目はデータ入力方法の改善です。私の母校はデータを紙媒体に記録した後、Excelに入力し、印刷したものを選手内で共有していましたが、ある程度時間がかかるため練習試合があるたびに入力するのではなく何日か分をまとめて入力している場面が見受けられました。少しでも入力の煩わしさを軽減するため今までベタ打ちだったものを、Excelのマクロを使うことでクリック入力や、選択式で入力を行えるようにしました。



3つ目は視覚化方法の改善です。
改善の流れとしては、実際に母校の試合のデータを視覚化し、試合後のミーティングで使ってもらいアンケートをとります。その結果を視覚化方法の改善に活かすことで、より選手が見やすい、求めるものに近づけていきました。
視覚化改善は計3回行いました。左が1番最初となっています。
効果的な攻撃が出来ている割合を色、打数を円の大きさで表現するなど選手が直感的に度のコースが効果的なのかが分かるような視覚化方法を用いました。
またアンケートから選手に…

広島テレビ新社屋「記憶の解凍」展覧会 開催

東京大学 大学院情報学環 渡邉英徳研究室は、広島テレビ放送と共同で、人工知能(AI)技術でカラー化した戦前・戦後の白黒写真をもとにして対話の場をつくりだし、被爆の記憶を継承することを目的として、

展覧会「記憶の解凍」 ~カラー化写真で時を刻み、息づきはじめるヒロシマ~

を開催いたします。
展覧会ウェブサイト展覧会チラシ 私たちはこれまでに、数百枚の白黒写真をAI技術でカラー化し、さらに、被爆者との対話を重ねて色を補正することによって、過去の記憶を辿る旅を続けてきました。最新技術と、被爆者・若者たちのコミュニケーションが組み合わさることで、これまで凍りついていた記憶が「解凍」され、よみがえります。

入場は無料です。みなさまのご来場をお待ちしております。

展示概要
会期:2018年11月23日(金・祝)~12月2日(日) ※10日間場所:広島テレビ新社屋エントランスロビー
広島市東区二葉の里3丁目5番4号
※広島駅北口徒歩3分時間:午前10時~午後5時 ※11月23日は午後1時開場。入場:無料展示チーム 主催:広島テレビ放送、東京大学大学院 渡邉英徳研究室原案:庭田杏珠(広島女学院高等学校)ビジュアルデザイン:秦那実会場デザイン:花岡大樹協賛:株式会社にしき堂、オタフクソース、広島ガス、広島管財、株式会社ロックサービス、アンデルセン、エネコム、中国電力、中電工、広島銀行、便利屋シンセー協力:広島女学院高等学校 生徒有志、ヒロシマ・フィールドワーク実行委員会、首都大学東京大学院ネットワークデザインスタジオ有志カラー化技術提供:早稲田大学 石川博研究室後援:広島県、広島県教育委員会、広島市、広島市教育委員会、公益財団法人広島平和文化センター、平和首長会議、公益財団法人広島観光コンベンションビューロー

「記憶の解凍」 ARアプリ公開

東京大学大学院情報学環 渡邉英徳研究室は、AI技術を活用してカラー化した“戦前の広島”の白黒写真を、地図・AR(拡張現実)ビューに表示する「記憶の解凍」ARアプリを公開しました。

私たちのチームはこれまでに、数百枚の白黒写真をAI技術でカラー化し、さらに、被爆者との対話を重ねて色を補正することによって、過去の記憶を辿る旅を続けてきました。最新技術と、被爆者・若者たちのコミュニケーションが組み合わさることで、これまで凍りついていた記憶が「解凍」され、よみがえります。

カラー化された過去の写真は、私たちの心のなかに、これまでにない感情を喚起します。その写真が、アプリを通して、現在の広島の風景に重ね合わされるとき、私たちの眼の前には、切り撮られた過去の日々につながる、時の窓が開きます。


本アプリは、渡邉英徳教授とともに活動を進めてきた、広島市在住の庭田杏珠さんとのコラボレーションによって制作されたものです。

アプリダウンロード(無料):
App Store / Google Playにて、キーワード「記憶の解凍」で検索ウェブサイトからダウンロード制作チーム:
原案・カラー化・アプリ作成:渡邉英徳×庭田杏珠考証協力:濱井德三、ヒロシマ・フィールドワーク実行委員会写真提供:濱井德三、今中圭介、緒方昭三、片山曻、諏訪了我(浄寶寺)、高橋久、多田良子、本田美和子、広島県立文書館、広島市公文書館、アメリカ公文書館(撮影:尾木正己)タイトルロゴデザイン:秦那実カラー化技術提供:早稲田大学 石川博研究室平和記念公園(爆心地)街並み復元図提供:中国新聞社

モノクロ写真のカラー化技術を用いたメディアと読者の対話を促すコンテンツ制作の研究

36歳,M2の與那覇里子です.  社会人学生として学んだ2年間の集大成を一部ですが,ご紹介します.
 タイトルは,「モノクロ写真のカラー化技術を用いたメディアと読者の対話を促すコンテンツ制作の研究」です.

なぜ,この研究をすることになったのか.
 ニュースの流通網は,新聞の戸別配達が大きな役割を担っている一方で,ネットの登場は,ニュース配信の仕組みを大きく変えました.  それぞれの持つメディアで情報を発信していたマスメディアは,Yahoo!やLINEに配信をはじめ,ユーザーがツイッターやフェイスブックなどのSNS,ブログなどにアップし,拡散されるようになりました.  地方紙で記者として携わる筆者としては,地方の情報を全国に直接届けられるようになり,チャンスが増えたと思う一方で,地域特有の文脈や情報が含まれているとなかなか読んでもらえないというジレンマを感じていました.  例えば,沖縄には,あの世の正月「グソーの正月」がありますが,見出しで取ったとしてもほとんど読まれません.  また,記事への書き込みは,ディスコミュニケーションが多くあるのが現状です.
 そこで,幅広い読者に沖縄のニュースへの理解を促すことを研究の目的にしました.
 そのために,次の3つのアプローチを取ります. 1)沖縄のニュースに興味・関心を持ってもらうコンテンツを制作 2)地元特有の文脈への理解促進 3)メディアと読者の前向きな対話を生み出す


どんな方法で目的を達成する?
 興味関心を引くために,飯塚らの開発したモノクロ写真をカラー化したAI技術を活用することにしました.

x  マスメディアは,読者に興味を持ってもらうため,イマーシブ型のリッチコンテンツを制作していますが,CG,凝ったUI,インフォグラフィックなどが盛り込まれ,記者がすぐに作れるものではありません.  飯塚らの技術であれば,1クリックで色をつけることができます.  エンジニアでない記者も扱うことが可能です.
 ただし,課題もあります.  AIは230万枚の写真から,着色について学んでいますが,正しい色ではないため,人の手による補正が必要です.  そのため,私の記者という職能を生かし,取材によって色を補う手法をとります.
コンテンツ制作
1)戦前の沖縄のモノクロ写真を活用
 写真については,朝日新聞が1935年に沖縄で撮影したモノクロ写真を使います.写真には,生き生きとした表情…

「記憶の解凍」国際平和映像祭2018にて学生部門賞を受賞

広島女学院高等学校2年生の庭田杏珠さんと,首都大学東京大学院2年の山浦徹也君が共同制作した映像作品「記憶の解凍:カラー化写真で時を刻み、息づきはじめるヒロシマ」が,9月22日にJICA横浜で開催された「国際平和映像祭(UFPFF)2018」の最終審査の結果,学生部門賞を受賞しました。受賞者は,ニューヨークの国際連合本部で11月に開催される「PLURAL+」の授賞セレモニーに招待され,作品上映とプレゼンテーションの機会を与えられます。


この作品は,2010年より渡邉英徳研究室と広島女学院高校が共同で取り組んできた「ヒロシマ・アーカイブ」の活動から派生したものです。昨年秋に首都大学東京で実施したワークショップにおいて,庭田さんたちは自動色付け技術を学び,それを活かした「カラー化写真をベースにした被爆証言の聞き取り」の営みをスタートしました。この活動を通して生まれたコンセプトが「記憶の解凍」です。


この映像作品では,現在は広島平和記念公園となっているかつての繁華街,旧・中島本町で暮らしていた濱井德三さんの記憶,そして生徒さんたちとの交歓,未来への希望が,スライドショーと音楽で表現されています。庭田さんが原作・脚本,山浦君が映像化を担当しています。ぜひ,ご覧いただければ幸いです。

イベント「デジタル時代における戦争体験の継承」を共催します。

東京大学大学院 渡邉英徳研究室は,イベント「デジタル時代における戦争体験の継承」(Yahoo!ニュース主催)を共催します。

日時: 2019年8月8日 18:30〜
会場:ヤフー本社17階「ヤフーロッジ」(定員100人)
入場:無料
主催:Yahoo!ニュース
共催:東京大学大学院 渡邉英徳研究室

お申込みはこちらから

戦後74年が経過し,「戦争体験の風化」が大きな社会課題になりつつあります。

あの時,何が起きていたのか。戦場,空襲といった「戦火」の体験に加えて,市民の体験をもとに,市民の生活に戦争がもたらしたものを見つめることにより,私たちの日々の暮らしが戦争によってどう変わり,何を奪われていくのかについて,実感が深まります。

メディアや研究機関,あるいは若者たちが,デジタルツールを駆使して戦争体験をあつめ,伝え,アーカイブする動きが各地で始まっています。また,アニメやコミックなど,若者が親しみやすい表現で,戦争を伝える試みも,ひろく支持されています。

こうした動きは,デジタル時代だからこそ生まれてきたものです。今回のイベントでは,この動きと力を結びつけ,大きな流れを作りたいと考えています。そのために,NHK,沖縄タイムス,ヤフーなどのメディア,そして市民ベースのボトムアップな活動で,戦争体験の収集・継承の活動をしている人々が一堂に会し,取り組みや成果を報告します。

登壇者
宮坂学(前 ヤフー株式会社 代表取締役社長(予定))NHK「あちこちのすずさん」スタッフ輿那覇里子(沖縄タイムス 記者)渡邉英徳(東京大学 大学院情報学環 教授)庭田杏珠(広島女学院高等学校 生徒)進行:宮本聖二(Yahoo!ニュース プロデューサー/ 立教大学大学院 教授)プログラム

第一部:メディアの取り組み
ネットメディア:宮坂「デジタルによる戦争体験の継承」テレビ:NHK「あちこちのすずさん」新聞:與那覇「沖縄戦デジタルアーカイブ」第二部:市民の取り組み
研究者:渡邉「ヒロシマ・アーカイブと「記憶のコミュニティ」」高校生:庭田「カラー化写真と対話による「記憶の解凍」」第三部:会場との対話

会場では,「記憶の解凍」(庭田杏珠× 渡邉英徳)によるパネル・映像を展示します。

ツバル・ビジュアライゼーション・プロジェクト公式サイト

ツバル・ビジュアライゼーション・プロジェクトの公式サイトをオープンしました。
http://tv.mapping.jp/
現時点では英語版のみ。また、レイアウトはbloggerのものを流用している仮版で、10月中旬に正式版が完成予定 (→原田(鈴木)真喜子さんのデザインにより完成しました。11/30追記)。ご愛顧のほど。それにしてもmapping.jpドメインを確保しておいて本当によかった。(wtnv)

令和元年度 被爆体験継承事業 企画展「ヒロシマの記憶を伝える 〜町と人々の暮らし〜」

広島市立中央図書館で開催される「令和元年度 被爆体験継承事業 企画展「ヒロシマの記憶を伝える 〜町と人々の暮らし〜」」に,「記憶の解凍」(庭田杏珠 × 渡邉英徳)として出展します。

新作のカラー化写真12点と,「ヒロシマ・アーカイブ」・「記憶の解凍」ムービーを展示します。また,7/21(日)には詩人のアーサー・ビナードさんと庭田・渡邉の対談・鼎談も行なわれます。みなさま,ぜひご来場ください。

チラシのPDFはこちらです

被爆体験継承事業 企画展「ヒロシマの記憶を伝える 〜町と人々の暮らし〜」
開催期間:令和元年7月6日(土)〜9月1日(日)会場:広島市立中央図書館 2階 展示ホール(広島市中区基町3番1号)主催:広島市立中央図書館協力:東京大学大学院渡邉英徳研究室、ヒロシマ・フィールドワーク実行委員会、広島平和記念資料館、広島市公文書館、広島市郷土資料館関連イベント「ヒロシマの記憶を伝えること」
日時:7月21日(日)13:00〜15:00内容:渡邉英徳(東京大学大学院情報学環教授)とアーサー・ビナード氏(詩人)の対談,庭田杏珠さん(広島女学院高等学校3年生)のプレゼンテーションなど