みなさんこんにちは!今年度より渡邉研博士後期課程に進学した片山実咲です。学部〜修士まで教育学研究科で教育心理学の研究を行っておりました。研究関心は,デジタルツイン・メタバース空間における平和教育です。
この投稿ではNew Yorkにて行われた渡邉研共催のシンポジウムについてご紹介いたします。
2023年3月26日(日)13:00-18:00,東京大学NYオフィスにてテクノロジーを活用した平和への取り組みについて議論することを目的としてTech for Peace Symposium 2023が開催されました。
参加者は,国内外からの専門家や学者,非政府組織,企業など幅広い分野から集まり,テクノロジーを活用した持続可能な開発,紛争予防,紛争解決などに関する議論を行ないました。
プログラム概要
- 基調講演(東京大学大学院 渡邉英徳教授)
- パネルディスカッション
「国連機関が繋ぐテクノロジーを活用した社会包摂」
モデレーター:東京大学大学院 渡邉英徳 教授
パネラー: 国連軍縮局上級政務官 河野勉 氏
国連事務局技術特使室アソシエートエキスパート 藤野太一朗 氏
国連国際学校日本語教師 坂本樹 氏
国連開発計画NY本部 対外関係アドボカシー局ジャパンユニットパートナーシップスペシャリスト 川瀬友裕 氏
- 高校生探究発表
- ディスカッションラウンドテーブル
基調講演
- ヒロシマ・ナガサキの被爆証言のアーカイブ
- 東日本大震災の犠牲者行動記録アーカイブ
- ウクライナの戦況アーカイブ
- トルコ・シリアの震災アーカイブ
上記の実践は,社会のあらゆる場所に点在するデータを,そのデータが生まれた地球上に時空間に再配置することで,これまで関係性を認識するのが難しかった情報の繋がりを顕在化させる営みです。デジタルアーカイブを用いて,マテリアルを紡ぎながらストーリーテリングをする方法,過去にストックされた貴重な記憶をフローさせる方法について紹介されました。
パネルディスカッション
パネルディスカッションでは,各パネラーが国連機関で取り組んでいることが紹介されたのち,以下の問いについて議論されました。
- 必要とされるテクノロジーはなぜ社会に浸透していかないのか?
- テクノロジーネイティブな若い世代とどう向き合うか?
- テクノロジーを分野横断的な視点からどう活用していくか?
- テクノロジーの平和的な活用にそれぞれの職域でどう立ち向かえるのか?
ディスカッションに対して,高校生からは以下のような質問とコメントが挙がりました。
- テクノロジーで戦争を止めることは可能なのか?
- 国連不要論が高まる中でそれでも国連が果たすべき必要不可欠な役割は何か?
- テクノロジーを国家間の関係改善に使っていくことが可能。歴史問題,被害者の話が埋もれている状況で活用ができそうだと思った。
高校生探究成果発表
続いて,高校生の探究成果発表では下記のようなテーマで発表がなされました。
- 地域のジェンダー平等のために高校生ができることは何か
- 女子トイレの混雑をサインデザインで解決する
- 日韓関係を改善するために必要なことは何か
- 国会で働きながら、研究する。 ー政策実務と学術研究のブリッジー
- 相談できる対話型ロボットの実現
- グローバル経営におけるテクノロジーの活用
- ICTを利用した地域活性化
- 象の本音
- 世界中の全ての子供たちが教育を受けられるために
- どうすれば益田を元気に、魅力的にでき、そして魅力を発信できるのか
それぞれの高校生が,自分の生活歴や地域の課題,問題意識から育て上げた非常に魅力的な探究について発表をしました。「無邪気な問い」をたて,持てるリソースをフル活用して探究を続ける高校生の発表に,会場の大人も多くの刺激を受けたようです。一つひとつの探究が,大きなSocial Goodに繋がることを確認し,半径2mの課題意識とそれらを解決したいという熱いエネルギーを大切に育てていける環境を創っていこうという空気が醸成されました。
ラウンドディスカッションテーブル
まとめ
今回のTech for Peace Symposium 2023では,高等教育機関,国連機関で平和な社会の実現に向けた活動を行う人と高校生が交わり,テクノロジーを用いた平和構築のあり方を議論することができました。シンポジウムを通じて,目指すべき「平和」とは何か,またそれはどのような工夫で実現していけるか,誰と協働することができるか,など様々な話題が議論されました。平和構築には,様々な立場からの貢献が必要不可欠です。今後はビジネスサイドも巻き込みながら,より多くの方と議論を活性化していけるのではないかと希望を抱いています。
2023年4月 渡邉研究室 博士後期課程 片山実咲