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【修論】場所への想像を喚起する AI ⽣成地図の制作

 

こんにちは!修士2年の濱津です。

この投稿では、私の修士研究「場所への想像を喚起するAI⽣成地図の制作」の内容を紹介します。


はじめに

古くから、地図が果たしてきた重要な役割の一つに「想像喚起」があります。

この想像は、実在する場所のみならず架空の場所でも成立し、古くから文学作品における想像地図や近年注目される空想地図として制作の対象となってきました。

また、最近は、専門家に限らず地図制作ができるツールとして画像生成 AI が注目されています。しかし、画像生成 AI を用いた想像地図の制作や、それらが読み手に対しどのような想像を喚起するかについての実践や研究は未だ十分に蓄積されていません。

そこで、画像生成 AI を用いて架空の場所の地図を制作し、それがいかに場所への想像を喚起するのかについて検証します。


手法

実在しない場所の主題図5種類を、画像生成AI Midjourneyを用いて生成します。

まず、実際の地図作図に基づいて、「地図要素と表現形式」と「地図の主題(目的)」を基本的な枠組みとしてプロンプトを設計し、地図を生成します。

続いて、生成された画像群の中から、地図らしさを担保する「プロンプト要素(地図要素と表現形式)の反映度合い」と「地図の主題(目的)を表しているか」の2点を基準として、各主題図につき1枚ずつ選定します。


選定した各主題図は以下の通りです。






結果として、選定された地図は、全体的な地図らしさは保たれつつも、プロンプトの指示や参考にした地図図式との差異といった不完全さを含むものでした。


検証・結果

選定した地図から想像できるストーリーを実験参加者に記述してもらい、その執筆過程について半構造化インタビューを行なって、AI 生成地図がいかに場所への想像を喚起するか検証します。

参加者が記述したストーリーとインタビューのデータについて主題分析を行った結果、AI 生成地図特有の「現実との差異」をきっかけとして想像が喚起されることが確認されました。

現実との差異は、次の3つに分類されました。


①既存地図の表現形式との差異

例)「車が走る道路が川のように水色で塗られている」
→「この要素はこの⾊で塗られるはず」という認識と表現形式が異なる


②非現実的な地物やオブジェクトの描画

例)途切れた橋+その状態が地図に描画されている→実空間では見られない状況の描画


③参加者の経験や認識との差異

例)碁盤目状の区画が多く、斜交する道路が少ない→参加者自身の場所の経験や認識と異なる


そして、これら「現実との差異」から想像された内容は、以下のように多様なテーマに及んでいました。

①ファンタジー
例)⾞が⾛る道路が川のように描画+子供が描いたようなデザイン
→地図作成者の属性(子ども)と掛け合わせた冒険の物語を想像

②理想的な空間
例)途切れた道路+手書き風のデザイン
→「どこか雑然としていて、整いすぎていない」ことを肯定的に捉え、理想的な街を想像

③不便さを伴う空間
例)橋の本数が少ない+迂回して自転車で学校に通った経験
→実空間との差異と経験を結びつけ日常的な不便さを想像

④現実の延⻑線上にある近未来的な設定
例)橋の上の正体不明な物体と途切れた橋+人口過密(社会問題)
→人口増加を防ぐため、橋により移動を管理・規制している状況を想像


結論

AI が⽣成した架空の地図ならではの「現実との差異」という特徴が、受け⼿の想像を刺激することが⽰されました。

間違いや違和感を認識し、そこから想像や発想を膨らませるというのは、さまざまな AI ⽣成の創作物に広く通じるものであり、AI を⽤いた表現や鑑賞のあり⽅を⽰唆を与えると考えられます。


外部発表
  1. Sumire Hamatsu, Atsuhiro Yamaguchi, Katsutoshi Amano, Juliette Yuzumi Iida and Hidenori Watanave. The Potential of AI "Maps" with Differences from the Real World to Expand Imagination, ICC2025 (International Cartographic Conference), Oral(abstract), Vancouver, Canada, August, 2025.

おわりに

この修士研究は、研究室の皆さんや研究科の友人たちなど、修士課程での活動に携わってくれた全ての皆様がいなければ成し得ないものでした。心より感謝申し上げます。
修士課程では、研究をはじめ、WSや学会、学内外での展示など、卒業後も糧となるような数多くの経験をすることができました。

今後も渡邉研の活動と皆さんのご活躍を心より応援しています!本当にありがとうございました。